⚗️ メドケム

ヒットからリードへ、SAR、リード最適化、標的タンパク質分解、新しいケミカルモダリティ。

2026-10-23 4件

BRD9 PROTACがマウスで効きにくい理由と、E3のヒト化による解決策

  • dBRD9やVZ185など広く使われるCRBN系・VHL系のBRD9分解薬は、BRD9自体の配列が高度に保存されているにもかかわらず、マウス細胞では活性が大きく低下する。
  • 原因はE3リガーゼの種差、特にCrbnのI391残基とVHLの構造差にあり、三者複合体の形成を妨げていると考えられる。
  • ヒトCRBNまたはVHLの発現、あるいはCrbnI391V変異の導入で、マウス細胞での活性が回復し、生体内のBRD9分解も向上した。
💡 ポイント

ヒト細胞株では見事に効くPROTACが、マウスの薬効試験では効かない。そんな経験のある人にはなじみのある話だ。げっ歯類での分解薬のPK/PDは、化合物ではなくE3の違いで失敗しうるので、CrbnI391Vやヒト化E3のモデルは早めに用意する価値がある。生体内で陰性でも、種をまたいだ三者複合体形成を調べるまでは、そのシリーズを打ち切るべきではない。

Improving PROTAC-Mediated Degradation in Mouse Models: BRD9 as a Case Study ↗

ピロロキノリン系の抗微小管薬、パクリタキセル・ダウノルビシン耐性細胞でも活性を維持

  • 1H-ピロロ[3,2-c]キノリンのライブラリを合成してSARを整理し、ナノモルレベルの低い濃度で増殖を抑え、正常線維芽細胞に対する選択性が非常に高い化合物を得た。
  • 最良の誘導体は、ダウノルビシン耐性株やパクリタキセル耐性株でも活性を保ち、排出比も低く、交差耐性が限定的であることを示唆した。
  • リード化合物は吸収が速く、半減期は中程度で、脳移行性は限定的だったが、ゼブラフィッシュ胚への毒性は治療域の狭さを示した。
💡 ポイント

P-gp排出を回避する微小管作動薬はいつでも関心を集めるし、排出比の低さと耐性株での活性維持は最初のフィルターとして妥当だ。ゼブラフィッシュの結果は正直な落とし穴で、強力な抗有糸分裂薬は安全域が狭いことが多く、培養細胞で線維芽細胞に選択的でも安全性の答えにはならない。次は結合部位と、この骨格をどこまで治療域の広い方向に調整できるかを見たい。

Design, Synthesis, and Biological Evaluation of 1H-Pyrrolo[3,2-c]quinolines as Potent and Selective Antitubulin Agents Active against Drug-Resistant Cell Lines ↗

パルミトイル化を阻害する経口STING阻害剤、炎症モデルで効果

  • 研究チームは、インターフェロン異常症や自己免疫疾患に関わる自然免疫アダプターSTINGの阻害剤として、テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピラジン骨格のシリーズを構築した。
  • リード化合物37は、細胞での強いSTING阻害に加え、良好な経口曝露と安全性を示した。
  • 作用機序はSTINGのパルミトイル化の阻止で、下流シグナルの活性化を抑える。
  • 経口投与により、化学物質誘発の急性モデルやTrex1欠損マウスなどで炎症が軽減した。
💡 ポイント

STING阻害剤はこれまでツール化合物か共有結合性のものが中心だったので、パルミトイル化を止める経口投与可能なケモタイプは、標的への別のアプローチになる。実際にCys91ポケットに結合するのか、もっと上流で働くのかが気になる。他のパルミトイル化タンパク質への選択性がそこで決まるからだ。自己免疫疾患への適用では、Trex1欠損マウスの結果が説得力を持つ。

Discovery of Novel Orally Bioavailable STING Inhibitors with 4,5,6,7-Tetrahydropyrazolo[1,5-a]pyrazine Moiety for STING-Mediated Inflammatory Disorders ↗

ループス向けTLR7/8デュアル拮抗薬からBRD4リスクを設計で排除

  • 2-(ピリジン-2(1H)-オン)インドールの構造ベース最適化により、従来シリーズより膜透過性が高く、イオンチャネル活性と分布容積が小さいTLR7/8デュアル拮抗薬が得られた。
  • 初期のピリドンリードは予想外に免疫細胞の増殖を抑え、チームはBRD4へのオフターゲット結合が原因と推定した。
  • BRD4結合を取り除く最適化により、増殖抑制は消え、ヒト全血でのTLR7/8依存的IL-6産生の強力な阻害は維持された。
💡 ポイント

細胞パネルでの不可解な毒性から機構の仮説を立て、SARで二つの活性を切り分けるという、表現型起点のオフターゲット対策のきれいな例だ。エンドソームのTLR7/8拮抗薬には膜透過性と高い選択性の両立が必要で、平面性の高いヘテロ芳香族はBRD4という落とし穴にはまりやすい。他の骨格に応用する前に、TLR7/8二量体界面でのピリドンの結合様式を確認したい。

Structure-Based Design of 2-(Pyridone)Indoles as Antagonists of the Toll-Like Receptors TLR7 and TLR8 for the Treatment of Autoimmune Disorders ↗

2026-10-22 6件

吸入投与を前提に設計したピロロピリミジン系DDR1/2阻害剤、肺線維症を標的に

呼吸器・線維症
  • 構造ベース設計により、DDR1/DDR2に強い親和性と良好なキノーム選択性を示す2つの5:6複素環シリーズを得た。
  • 続いて吸入を前提とした設計で、活性・物性・in vitro ADMEを肺内局在型に最適化した。
  • 化合物25は、TGF-β誘導の線維化モデルで抗線維化作用を示し、局所投与に適した薬物動態を備えていた。
💡 ポイント

吸入キナーゼ阻害剤は、肺内滞留と全身クリアランスのバランスで成否が決まる。全身投与型化合物を後から改造するのではなく、最初からそこを狙って設計するのは正しい選択だ。注意したいのはリソソーム捕捉や粘液線毛クリアランスで、in vitro ADMEでは捉えにくい。DDRの生物学は線維症で説得力があるが、臨床での検証はまだ待たれる標的である。

Lung-Tailored Pyrrolo-pyrimidine DDR Inhibitors Designed for Optimized Local Delivery ↗

キノーム全体で高選択的かつ経口投与可能なマクロ環CDK7阻害剤

  • 17員環マクロ環のピラゾロトリアジン骨格を構造に基づいて最適化し、強力なCDK7阻害剤を得た。
  • 400種超のキナーゼパネルで有意なオフターゲット活性はなく、既存CDK7阻害剤の選択性の低さを克服している。
  • 細胞では細胞周期停止と転写抑制、c-Myc低下を示し、特にトリプルネガティブ乳がん細胞で顕著だった。経口バイオアベイラビリティも良好で、薬物動態は線形だった。
💡 ポイント

CDK7で400種超のキナーゼにわたりクリーンな結果が出るのは珍しい。この分野の共有結合阻害剤はTHZ型の弾頭に頼ってきたからだ。非共有結合のマクロ環で経口曝露も取れているなら、転写依存性の適応症で実際に手に取りたいプロファイルである。残る問いはオンターゲット毒性で、キナーゼ間の選択性だけではCDK7の正常な転写での役割に起因する毒性は避けられない。

Discovery of Pyrazolo[1,5-a]-1,3,5-Triazine Derivatives as Potent, Highly Selective and Orally Available Macrocyclic CDK7 Inhibitors ↗

非ATP競合型MKK3モジュレーターが潰瘍性大腸炎モデルでTNF-αを抑制

  • ATP競合型p38阻害剤はキノーム選択性の低さなどで臨床で失敗したため、上流キナーゼMKK3の非ATP競合ポケットを狙った。
  • リード化合物(R)-48はTNF-α産生を抑え、経口バイオアベイラビリティが高く、マウス潰瘍性大腸炎モデルで用量依存的な効果と明確なPK/PD関係を示した。
  • 結合様式の検証にはHDX-MSなどの生物物理データを用いている。
💡 ポイント

p38の一段上流に移るのは、第一世代阻害剤を沈めた選択性の問題を回避する理にかなった方法だ。UC向けの経口TNF低下低分子が出てくれば、注射剤のバイオ医薬品とは明確に別の選択肢になる。気になるのはアロステリックなポケットで、ATP部位以外に結合するキナーゼ阻害剤のSARは急峻で種差も出やすいので、ヒトタンパクでのデータを早めに確認したい。

Design and Synthesis of Novel, Non-ATP-Competitive MKK3 Modulators as Suppressors of TNF-α Production for the Treatment of Ulcerative Colitis ↗

フマル酸エステルを付加したTTK阻害剤がRNF126経由の一価分解薬に

  • TTK阻害剤に求電子性のフマル酸モノメチルを付けるだけで、E3リガンドを持たない単一弾頭の分解薬が得られた。
  • 代表化合物はTTKを分解し、複数のがん細胞株で元の阻害剤より強い増殖抑制を示した。
  • 機構解析では、化合物がE3リガーゼRNF126とTTKの会合を安定化し、ユビキチン化とプロテアソーム分解を促すと示唆された。
💡 ポイント

一価分解薬の魅力は、阻害剤並みの分子量と膜透過性を保てることだ。ただしフマル酸ハンドルはシステイン反応性の基なので、RNF126だけで説明できるかはプロテオーム規模の反応性データを見てから判断したい。それでも他のキナーゼ骨格に使い回せるなら、手持ちの阻害剤シリーズで試す価値のある安上がりな手だ。

Discovery of Threonine Tyrosine Kinase (TTK) Degraders Utilizing an Electrophilic Monomethyl Fumarate Handle ↗

求電子剤優先スクリーニングでE2酵素UBE2D2の共有結合型アミノチアゾール阻害剤を同定

  • 求電子剤を先に選ぶスクリーニングとX線結晶構造解析により、UBE2D2の2つのシステイン(C85とC111)に結合する共有結合性ヒットを得た。
  • アミド基とエステル基を構造に基づいて改変し、C111への結合を消してC85への親和性を高めた。
  • 最適化類縁体はUBE2D2の酵素活性を阻害し、A549肺がん細胞の増殖を抑えた。
💡 ポイント

E2酵素は創薬困難と見なされてきたので、結晶構造に裏づけられた共有結合シリーズが出てきたこと自体が前進だ。注目は2つ目のシステインへの結合を設計で消した点で、プローブと呼ぶには必須の作業である。次に知りたいのはUBE2Dファミリーの他メンバーへの挙動で、活性中心システインは保存されているため、選択性が最大の難所になる。

Electrophile-First Screening Identifies Covalent Aminothiazole Scaffold Inhibitors for Ubiquitin-Conjugating Enzyme UBE2D2 ↗

YKS-34:特発性肺線維症を狙う、PDE4Bに1000倍超選択的な阻害剤

  • 承認済みの唯一のPDE4B優先阻害剤nerandomilastはPDE4Dに対し約9倍の選択性にとどまり、これを改善することが出発点だった。
  • YKS-34は強力なPDE4B阻害剤で、PDE4A、4C、4Dにはいずれに対しても1000倍超の選択性を示す。
  • in vitroでTGF-β誘導の線維芽細胞活性化とLPS誘導のTNF-α放出を抑え、良好な薬物動態と肺組織への集積を示した。
💡 ポイント

悪心・嘔吐の原因はPDE4D阻害なので、9倍から1000倍超へという改善は狙う価値のある最適化だ。BとDのポケット差はごくわずかなので、結合様式がどうなっているのか気になる。盛り上がるのは、ブレオマイシンモデルで治療的投与の結果を見てからにしたい。

Discovery of YKS-34, a Highly Selective PDE4B Inhibitor for the Treatment of Idiopathic Pulmonary Fibrosis ↗

2026-10-21 4件

DNAベースPROTACがTKI耐性肺がんモデルでCENPBを分解

  • セントロメアの配列特異的DNA結合タンパク質CENPBは悪性度の高いがんで過剰発現するが、直接の阻害剤はない。
  • CENPB OligoTACは、CENPB結合性オリゴデオキシヌクレオチドとE3リガーゼリガンドを連結した分子で、CENPBのユビキチン化とプロテアソーム分解、セントロメア破壊、アポトーシスを誘導する。
  • 第1〜3世代のTKIに耐性のNSCLCモデルで有効で、正常細胞への毒性は小さく、血清中安定性も良好、in vivoでPKと忍容性も良好だった。
💡 ポイント

タンパク質自身のDNA認識配列をそのままウォーヘッドにするので、低分子が入るポケットが要らない。転写因子のような標的にとって魅力的なアプローチだ。気になるのはマウス以外での送達、オリゴ製造コスト、そしてCENPBはあらゆる細胞に発現するため、腫瘍選択性が本当に保たれるかという点である。

Centromere-Targeting Chimeras for Combating Cancer Drug Resistance ↗

効力を保ったままhERGを下げたDCN1–UBE2M相互作用阻害剤

  • 先行ツール化合物NAcM-OPTはDCN1–UBE2M相互作用を阻害し、経口投与でき、異種移植腫瘍の増殖も抑えたが、hERGへの有意な親和性が開発のネックだった。
  • 著者らは骨格を系統的に修飾し、DCN1への結合を保ちつつhERG結合を低減させた。
  • 得られた化合物110は、生化学的・細胞での効力は親化合物と同等で、物性が改善し、hERGに対する選択性も向上した。
💡 ポイント

心毒性で行き詰まった検証済みPPIケモタイプを、SARだけで立て直した地味だが重要な続編だ。塩基性で脂溶性の高いPPI阻害剤を抱えているなら、ファーマコフォアを手放す前に、hERGは構造修飾で外せるかどうかを自分のシリーズで確かめる価値がある。

Reducing off-Target hERG Activity of First-Generation DCN1-UBE2M Interaction Inhibitors: Design, Synthesis, and Structure−Activity Relationships ↗

総説:構造ガイド設計はいかにFGFR3選択的阻害剤を実現したか

  • 第二世代のpan-FGFR阻害剤はコンセプトを実証したが、FGFR1・2・4の阻害に伴う毒性が制約となっていた。
  • ファミリー内の構造相同性は高いにもかかわらず、構造ガイドの取り組みにより、臨床評価に入った初のFGFR3選択的阻害剤が生まれた。
  • 本Perspectiveは、生物学的根拠、選択性を生む設計戦略、膀胱がんや軟骨無形成症など新たな適応を扱う。
💡 ポイント

高度に保存されたキナーゼファミリー内でのアイソフォーム選択性は、構造ベース設計の到達点を測る好例で、FGFR3には臨床段階の答えが出てきた。注目は軟骨無形成症だ。慢性かつ小児に近い適応では忍容性のハードルが腫瘍領域よりずっと高く、選択性の価値がまさに効いてくる。

FGFR3 Selectivity in Drug Discovery: Biological Rationale, Design Strategies, and Therapeutic Potential ↗

マウスで単回投与治癒を示したピラジン-2-カルボキサミド系抗マラリア薬が第1相へ

  • 熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)の増殖阻害スクリーニングから、赤血球期マラリア向けの新規ピラジン-2-カルボキサミド系列が見出された。
  • リード最適化で抗原虫活性と代謝安定性を高め、CYP2D6阻害リスクを下げてIWY357に到達した。
  • Pfヒト化SCIDマウスモデルで単回投与により完全に治癒し、薬剤耐性選択でも高い耐性障壁を示し、GLP毒性試験を経て第1相試験に進んだ。
💡 ポイント

フェノタイプ由来のヒットが、ヒト化マウスでの単回投与治癒を示してそのまま臨床に進んだ。一次治療薬への耐性が広がる中で、この分野が待っていた形だ。CYP2D6の問題を解消した点は、短期レジメンの本命となる併用療法で効いてくる。単回投与という主張は曝露量次第なので、ヒトPKに注目したい。

Discovery of a Pyrazine-2-Carboxamide Derivative as a Potent Plasmodium falciparum Inhibitor with Potential for Single-Dose Cure ↗

2026-10-20 4件

エポキシスクシナミド弾頭はPLproに強力だが、ヒドラジドリンカーが代謝の弱点に

  • Cys-111と反応するエポキシスクシナミド弾頭に、非共有結合型阻害薬で用いられるBL2溝への結合要素を組み合わせ、共有結合型PLpro阻害薬を設計した。
  • 化合物は非常に高い酵素活性を示し、培養細胞でウイルス力価を大きく低下させた。
  • 柔軟なヒドラジドリンカーは肝臓のカルボキシルエステラーゼで分解され、代替リンカーも奏功せず、代謝面が制約となった。
💡 ポイント

強力な弾頭が肝臓で壊れるのはよくある話だが、ここでは壊れるのがCys-111に届かせるために必要なリンカーそのものだ。次のコロナウイルスに備えてエポキシスクシナミドは手元に置いておきたい。ただ、最初に作り直すのはリンカーだろう。

Discovery of Epoxysuccinates as Potent Covalent Inhibitors of SARS-CoV-2 Papain-like Protease ↗

サルパリブのカルボキサミドを置換し、経口・脳移行性のPARP1選択的阻害薬を創出

  • 脳腫瘍を狙い、サルパリブのカルボキサミドを各種複素環に置き換え、血液毒性を抑えるためPARP2よりPARP1を選択的に阻害する化合物を探索した。
  • 通常のMDR1-MDCKではなくCaco-2排出を選別指標に用い、脳内の非結合型曝露が良好な化合物を選んだ。
  • 選ばれた化合物は経口バイオアベイラビリティを示し、低用量の異種移植モデルで腫瘍退縮を示した。臨床用量も低く見積もられている。
💡 ポイント

一次カルボキサミドの置換は大胆だ。この基はニコチンアミドポケットのアンカーなので、複素環で結合が保たれたのは見どころになる。もっと使えるのは選別法で、Caco-2排出のほうが脳内非結合型曝露をよく反映するなら、他のCNS創薬でも良い化合物を落としているかもしれない。

Discovery of Potent, Orally Bioavailable, and CNS-Penetrant 1,2,3-Triazolopyridinyl Piperazine-Based PARP1-Selective Inhibitors ↗

PROTACの標的結合のばらつきは、E3認識よりも細胞内曝露の差が大きい

  • E3リガンド、リンカー、標的リガンドが異なる20種のPROTACを、セレブロンおよびVHLトレーサーに対する細胞内NanoBRET競合アッセイで評価した。
  • 添加濃度基準では見かけの活性が大きくばらつき、受動的なCaco-2透過性ではほとんど説明できなかった。
  • 実測した細胞内非結合型曝露で補正するとばらつきは大幅に縮小し、膜透過処理した細胞での値と一致した。
💡 ポイント

PROTACのSAR表をE3親和性の差として読む前に、細胞が実際に見た濃度を確かめたくなる。ばらつきの大半が非結合型曝露なら、活性向上に見えたリンカー修飾は透過性の改善にすぎないかもしれない。曝露を早期に測れば、見当違いの変数を追わずに済む。

Exploring the Relationship between Cell Permeability, Intracellular Exposure, and Target Engagement for PROTACs ↗

AlphaLISAスクリーニングでISG15–UBA7相互作用の阻害剤探索が可能に

  • ISG15とそのE1酵素UBA7はISG化を担い、がんの治療抵抗性との関連が指摘されるが、阻害薬はまだない。
  • 著者らはISG15–UBA7相互作用を測るAlphaLISAアッセイを構築し、ハイスループット向けの頑健性を確認した。
  • 小規模ライブラリーのパイロットスクリーニングでヒットが数個得られ、うち2つは細胞内でもISG化を低下させた。
💡 ポイント

対象は千化合物に満たないパイロットなので、ヒットは出発点にすぎずリードではない。大事なのは、ユビキチン様修飾因子とE1のタンパク質間相互作用がスクリーニング可能な形になった点だ。実際の多様性ライブラリーで回し、AlphaLISA干渉物のカウンタースクリーンを徹底したい。

A High-Throughput Screening Platform for the Discovery of Noncovalent Inhibitors of the ISG15–UBA7 Interaction ↗

2026-10-19 2件

承認済みアントラサイクリン系薬を1分子の光増感剤へ転用する化学光線療法

  • 承認済み抗がん剤の厳選ライブラリーをTD-DFTでスクリーニングし、光物性の良い発色団含有候補を抽出した。
  • ミトキサントロン、ピキサントロン、ダウノルビシン、エピルビシンは光照射で活性酸素を生成し、乳がん細胞への細胞毒性が高まった。
  • 1分子で化学療法と光線力学療法の両方を担うため、2成分コンジュゲートが不要になる。
💡 ポイント

安全性とPKが既知の化合物から出発するのは賢く、CMCも毒性の説明もすでに揃っている。ただしこれらの発色団の吸収波長は組織透過性が低く、アントラサイクリン由来のROSは心毒性の懸念も増やす。期待する前に、in vivoでの光照射量の許容域を見たい。

Repurposing Approved Chemotherapeutics as Intrinsic Photosensitizers for Single-Molecule Chemophototherapy ↗

アルブミン搭載Fe(III)錯体が三陰性乳がんでフェロトーシスと免疫活性化を誘導

  • Fe(III)化合物群を最適化して得たFe4はTNBC細胞に強い毒性を示し、ヒト血清アルブミンのナノ粒子(HSA-Fe4)に製剤化された。
  • 構造解析により、Fe4はHSAのIBサブドメインに結合し、His-146が鉄中心に配位することが示された。
  • in vivoでFe4とHSA-Fe4は、フェントン型の化学動力学療法、フェロトーシス、免疫活性化を通じて腫瘍の増殖と転移を抑えた。
💡 ポイント

アルブミン結合部位を配位ヒスチジンまで特定している点が、単なるナノ粒子論文との違いで、配位子SARの足がかりになる。一方、レドックス活性な鉄がフェロトーシス、フェントン反応、免疫を同時に動かすため要因の切り分けは難しい。効果を評価する前に、正常組織への選択性を確認したい。

Developing a Ferric(III) Agent for Targeted Inhibition of Growth and Metastasis of Triple-Negative Breast Cancer Based on Human Serum Albumin by Chemodynamic Therapy-Driven Synergistic Therapy ↗

2026-10-18 4件

3H-1,5-ベンゾジアゼピン誘導体がマイクロモル域の抗マラリア活性、標的候補にPfSET3

  • 3H-1,5-ベンゾジアゼピン18種を合成し、クロロキン感受性・耐性の熱帯熱マラリア原虫で評価、HepG2毒性で初期の選択性を確認した。
  • 複数の化合物が低マイクロモル域で活性を示し、最も強力な化合物と選択性に優れる化合物は別だった。
  • 主要2化合物はヒトG9aへの阻害は弱く、ドッキング・MM-GBSA・MDで原虫PfSET3への結合を推定した。
💡 ポイント

低マイクロモルの細胞活性で選択性の幅も狭いなら、まだリードではなく出発点だ。標的の主張はドッキングに依存しており、仮説の域を出ない。原虫のエピジェネティック酵素を狙う珍しいケモタイプという点は面白い。次はPfSET3の生化学アッセイと、選択性に優れた化合物周りのSAR展開を見たい。

3H-1,5-Benzodiazepine Derivatives as Novel Antimalarial Agents: Synthesis, Biological Evaluation and Computational Target Exploration ↗

BPTFのヒストンコード認識を手がかりに、ペプチド–低分子二価阻害剤を設計

  • BPTFのPHD–ブロモドメインはH3K4me3とK14アセチル化の組合せを認識し、結晶構造で確認された。両者はシス配置を含め協調的に読み取られる。
  • リガンド結合に伴う二つのリーダードメイン間の構造変化を、実験的に初めて示した。
  • この知見から、両ドメインを阻害するペプチド–低分子コンジュゲートMJ-1を設計し、PHDフィンガーの標的化しにくさに対処した。
💡 ポイント

BPTFのブロモドメイン結合剤は多くが追ってきたが成果は限られ、難所はPHDフィンガーのほうだ。ペプチドから親和性を借りる二価設計は現実的な手だが、ペプチド・コンジュゲートは細胞膜透過性のあるリードには程遠い。どちらの半分が活性を担うのか、低分子だけで成立するのかを知りたい。

Bivalent Inhibitor Development for a Dynamic Epigenetic Tandem Reader Protein Using a Combinatorial Histone Code ↗

MYCの天然変性領域に結合するde novo設計タンパク質が腫瘍増殖を抑制

  • 保存されたエピトープ(がん化活性に必要な天然変性モチーフを含む)を狙ってMYC結合タンパク質を設計した。
  • in vitroで強く結合し、細胞内ではMYCに作用してMAXとの会合を阻害し、MYC関連複合体の構成を変えた。
  • 血液・肝・膵・患者由来など複数のMYC依存性モデルで増殖が低下し、膵がん同所移植モデルでは結合体発現細胞が選択的に減少した。
💡 ポイント

MYCには低分子が入るポケットがないので、設計タンパク質で無秩序領域のエピトープを狙う発想は理にかなう。ただし細胞内発現で効いたことは送達の問題を何も解決しておらず、まずは標的バリデーション用の道具と見るべきだ。低分子のPPI阻害やデグレーダーがどこを狙えばよいかを示す地図としては価値がある。

MYC targeted de novo binders impair tumor growth ↗

mRNAディスプレイ由来の大環状ペプチドIMP2660が、エフェクター非存在下のRAB27A構造解析を可能に

  • RAB27Aのエフェクター結合面を標的にmRNAディスプレイを行い、大環状ペプチドのヒットを得て最適化し、IMP2660に到達した。
  • IMP2660はRAB27Aに強く結合し、RAB27A–エフェクター相互作用を阻害する。
  • 活性型RAB27Aとの共結晶構造をエフェクターなしで取得でき、エフェクター結合面の構造ベース設計の足場になる。
💡 ポイント

見過ごされがちな成果は結晶化シャペロンとしての価値だ。野生型RAB27Aはエフェクターとの複合体でしか結晶化できなかったので、マクロ環結合構造が得られればソーキングやフラグメント研究が回せる。ただIMP2660が道具を超えるかは別問題で、細胞内GTPaseを狙う大環状ペプチドの膜透過性が最大の壁になる。

A potent macrocyclic peptide binder enables effector-free crystallization of the GTPase RAB27A ↗

2026-10-17 6件

スキャフォールドハイブリッド化から生まれた経口MRGPRX2拮抗薬INCB187175

  • MRGPRX2はIgE非依存性のマスト細胞活性化を担い、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、偽アレルギー反応に関与する。
  • スキャフォールドのハイブリッド化とSARにより、Gq/IP1とβ-アレスチン双方のアッセイで活性を示すピラゾロピリミジン系拮抗薬を得た。
  • 溶解性とCYP阻害の問題を解消してINCB187175に到達し、複数種で経口曝露が得られ、ヒト初代マスト細胞の脱顆粒とin vivoのマスト細胞活性化を抑制した。
💡 ポイント

バイアスが薬理を濁しうる受容体で、Gqとβ-アレスチンの両読み出しで評価した点は妥当だ。溶解性とCYPの改善も、偶然のヒットではなく地道な最適化の話として読める。競合の多いMRGPRX2では、ヒトでの曝露と、ヒト限定の受容体に対する動物代替アッセイの外挿性が差別化の鍵になるだろう。

Discovery of Pyrazolopyrimidines as Potent and Orally Bioavailable MRGPRX2 Antagonists ↗

分子動力学でRhoJ特異的なN末端ポケットを発見、テルコナゾールがPAK3結合を阻害

  • RhoJは配列上Cdc42とほぼ同一だが固有のN末端伸長部をもち、PAK3結合時にアロステリックポケットを形成することがシミュレーションで示された。
  • このポケットを標的とした構造ベース仮想スクリーニングで、抗真菌薬テルコナゾールが結合候補として浮上した。
  • 生細胞で最適化したBRET2バイオセンサーを用いると、テルコナゾールはRhoJ–PAK3相互作用を用量依存的に低下させた。
💡 ポイント

Cdc42にない配列伸長部で選択性を狙うのは、保存性の高いGTPaseを攻める定石だ。ただしテルコナゾールは転用アゾールで出発点としては心許なく、BRETの低下だけではポケット結合の証明にならない。N末端残基の変異導入と物理化学的な結合測定を経てから妥当性を判断したい。

Identification and targeting of a novel drug pocket in the tumour angiogenesis regulator RhoJ ↗

結晶構造で見る、脳移行性EGFR阻害薬が脳曝露だけでなく活性も高める理由

  • 血液脳関門透過性を高める設計がなされたEGFR阻害薬について、X線結晶構造解析と活性測定を行った。
  • BBB透過性を高める置換基はEGFRキナーゼドメインの多様な領域と相互作用し、生化学的・細胞活性は概ね向上した。
  • 塩橋を形成する部分構造と特定のハロゲン置換の組み合わせが最も有効で、「一石二鳥」の設計指針を示す。
💡 ポイント

CNS曝露と活性はたいていトレードオフなので、同じ極性・塩基性ハンドルで両方を得られるという結晶学的根拠は有用だ。塩橋とハロゲンの組み合わせは、自分のキナーゼ系列にも試せる具体的な設計則になる。ただし排出や非結合型脳内濃度には触れておらず、実際の有効性はそこで決まる。

Structural Insights into Brain-Penetrant EGFR Tyrosine Kinase Inhibitors with Enhanced Potency ↗

セレブロンの潜在Cys287を狙う共有結合リガンドがE3リガーゼを開状態に固定し、IMiD駆動の分解を阻止

  • システイン指向のケモプロテオミクススクリーニングで、サリドマイド結合部位から離れたアロステリックポケットCys287に結合する共有結合リガンドを同定した。
  • リード化合物VVD-105917は、IMiDやCELMoDによるネオ基質の分解を広く阻害する。
  • クライオ電顕で、セレブロンを開いた不活性型に固定することが示され、リガンド添加順序にも依存する。同部位の既報リガンドは逆に閉鎖を促進するため、このポケットは作用が反転しうる。
💡 ポイント

これまでのCRBN薬は全て単一のオルソステリックポケットに結合するため、開閉スイッチを制御する共有結合ハンドルは本当に新しいつまみだ。パン阻害薬は分解薬の機序解析やオフターゲット分解のレスキューに優れたツールになる。どちらにも振れる部位ということは、分解を高めるリガンドが同じポケットに潜む可能性もある。プレプリントなので査読を待ちたい。

Allosteric covalent inhibition of cereblon through cryptic cysteine targeting ↗

アダマンタンキャップのインドール系ヒドロキサム酸YP200、HDAC11選択性を肺がんPDXモデルで実証

  • 既報リードPB94を出発点に、インドール系ヒドロキサム酸のコア・リンカー・キャップをHDAC11向けに多面的に最適化した。
  • 最良化合物YP200は、二級アミンリンカーとアダマンタン表面認識キャップを併せ持つ。
  • HDAC11に対し高活性で他のHDACアイソフォームへの選択性も高く、患者由来NSCLC異種移植モデルで腫瘍増殖を抑えた。
💡 ポイント

ヒドロキサム酸はアイソフォーム間で綺麗に分かれにくく、選択性の主役が嵩高いアダマンタンキャップだという点が気になる。HDAC11の狭いチャネルは、亜鉛結合基よりキャップのサイズを重視するのかもしれない。HDAC11プローブの妥当性をめぐる議論も最近あるので、動態込みのアイソフォームパネルと細胞内標的結合の確認がほしい。

Development of a Potent and Isoform-Selective HDAC11 Inhibitor with Anti-Tumor Efficacy against Non-Small Cell Lung Cancer ↗

マッチした陰性対照つきの5-アザインドール系TTBK1/2プローブ、繊毛形成を阻害

  • 5-アザインドール系化合物13は、タウチューブリンキナーゼ1・2に強力かつ細胞活性を示す。
  • 細胞内キノーム全域の解析でオフターゲットは限定的で、NanoBRETによる追試でCDK11A/B、CK1δ、PIKfyveに絞り込まれた。
  • 構造の近い化合物5は細胞内でTTBKに結合せず陰性対照として機能し、化合物13はTTBK2の自己リン酸化とRPE-1細胞の一次繊毛形成を阻害した。
💡 ポイント

評価したいのは姿勢の良さだ。細胞内キノーム選択性マップ、CDK11やPIKfyveの弱点の率直な開示、構造が近い不活性対照が揃っている。繊毛形成の表現型に生物学的意味を読む前に、プローブはこうあるべきだ。まず試したいのはCDK11の重なりで、別骨格のプローブで検証したい。

Potent and Cell Active 5-Azaindole-based Tau Tubulin Kinase Inhibitors Disrupt Ciliogenesis ↗

2026-10-16 8件

共有結合型ライブラリのハイコンテントスクリーニングで、新たな初期有糸分裂阻害剤を同定

  • 紡錘体形成の初期異常を捉える、細胞ベースのハイコンテントイメージングスクリーニングを構築した。
  • システイン反応性ライブラリ3,520化合物に適用し、微小管脱重合剤、紡錘体位置決定の撹乱剤、紡錘体構造や染色体整列に影響する化合物が見つかった。
  • うち2化合物は有糸分裂停止とがん細胞の生存率低下を引き起こした(プレプリントで査読前)。
💡 ポイント

共有結合型ライブラリでの表現型スクリーニングは、標的ベースでは拾えないケモタイプを見つける理にかなった方法だ。弱点は標的同定で、システイン標的が分かるまでは、微小管脱重合剤もまた一つのチューブリン結合剤で終わる恐れがある。注目はチューブリン以外のヒットだ。

Identification of Cysteine-Reactive Early Mitotic Inhibitors ↗

ElevenostatはHDAC11選択的プローブではなく、HDAC6に偏る多重HDAC阻害薬だった

  • Elevenostat(JB3-22)を組換えHDACアイソフォームと2種類の直交的HDAC11アッセイで再評価したところ、HDAC11阻害は弱かった。
  • HDAC1〜11の全パネルでは、HDAC6とHDAC10およびクラスI酵素への阻害がはるかに強く、HDAC11が最も感受性の低いアイソフォームだった。
  • 細胞内でもチューブリンやヒストンのアセチル化上昇と生存率低下が見られ、HDAC6とクラスIの関与と整合するため、この化合物に基づく過去のHDAC11の結論は再解釈が必要だ。
💡 ポイント

地味だが価値の高い論文だ。HDAC11のツールとして使われてきた化合物が、実はHDAC6に最も強く効く。Elevenostatで報告された表現型は、すべて帰属の見直しが必要になる。阻害薬をプローブとして使う前には、全パネルでの選択性と対照となる不活性化合物が要るという教訓でもある。

Elevenostat Is an HDAC6/Class I-Biased Multi-HDAC Inhibitor Rather than an HDAC11-Selective Chemical Probe ↗

静止状態と不活性化状態をほぼ同等に阻害するNaV1.7アミノピリミジンプローブ

  • 古典的な局所麻酔薬型のポア結合体を除外するよう設計した自動パッチクランプのスクリーニングで、アミノピリミジンのヒットを見出し、化合物6へ最適化した。
  • 化合物6は静止状態と不活性化状態の活性がバランスし、NaV1.5に対する選択性と、NaV1.1を含むテトロドトキシン様のアイソフォーム特性を併せ持つ。
  • SARから、アミノピリミジンコアとメチレン連結アニリンがこの特性の鍵を握ると示された。
💡 ポイント

NaV1.7計画が臨床で失敗し続ける理由として状態依存性は有力な容疑者で、静止・不活性化の両状態を等しく遮断するプローブはその仮説の検証に好適だ。NaV1.1への活性は痙攣関連の懸念材料になり得るので、プロファイルを深読みする前に結合部位の同定が欲しい。

A Nontoxin Aminopyrimidine Probe for Near State-Independent Na V 1.7 Inhibition ↗

EGFRキナーゼ阻害薬の骨格からキナーゼ活性を除き、BAX阻害薬へ転換

  • バーチャルスクリーニングで、ダコミチニブやゲフィチニブ類似骨格などのEGFR阻害薬がBAX結合候補として抽出された。
  • 系統的な構造修飾でBAX阻害のSARを構築し、EGFRキナーゼ活性を大きく低減した。
  • この系列は、試験管内・細胞・iPS由来脳オルガノイドでBAX阻害の改善を示し、薬物様性も良好だった。
💡 ポイント

BAXのような実行因子を阻害するのは難しく、実績あるキナーゼ骨格から出発するのは現実的だ。ただ勝負はEGFR活性が十分に消えているかで、キナーゼにも効く細胞保護薬は神経保護薬として使いにくい。BAXへの直接結合を示す直交的な証拠と、より広いキナーゼパネルでの確認が欲しい。

Discovery of Anti-apoptotic BAX Inhibitors ↗

スキャフォールドホッピングで得たBCL6 PROTAC、DLBCL細胞で標的を分解し経口でも異種移植腫瘍を抑制

  • BCL6リガンドBI-3802からのスキャフォールドホッピングにより、新規の三環性オキサジノキノリノン骨格が得られた。
  • リンカーとCRBN認識部位を最適化した化合物15は、CRBN・プロテアソーム依存的にBCL6を速やかかつ強力に分解した。
  • BCL6依存性DLBCL細胞の増殖を強く抑え、経口投与でOCI-LY1異種移植モデルの腫瘍増殖を、明らかな毒性なく抑制した。
💡 ポイント

BI-3802は重合を介する独特な機序で分解を起こすため、新しい三環性コアから従来型のCRBN型PROTACを組むのは、BCL6除去の別ルートとして価値がある。肝心なのは経口で効いた点で、分子サイズと膜透過性をどう折り合わせたのか、またOCI-LY1以外の細胞株でも分解の深さが腫瘍応答と相関するのかを確かめたい。

Discovery of Tricyclic Oxazinoquinolinone-Based BCL6 PROTAC Degraders with Potent Activity Against Diffuse Large B-Cell Lymphoma ↗

GTA182:MTAP欠失腫瘍向けの脳移行性MTA協調型PRMT5阻害薬

  • 構造ベース設計と多パラメータ最適化により、MTAP欠失細胞を野生型より強く選択的に抑える三環性アミドGTA182が得られた。
  • 低い排出と調整された物性により、有効域に入る非結合型脳内濃度が確保された。
  • 経口投与でMTAP欠失異種移植モデルと同所性膠芽腫モデルで腫瘍退縮を示し、第I相でも忍容性は良好で頭蓋内腫瘍の縮小が報告された。
💡 ポイント

MTA協調型PRMT5阻害薬は競合が多く、差別化の決め手は脳内曝露だ。膠芽腫ではMTAP欠失が多いのに、多くの競合薬は腫瘍に届かない。創薬化学の論文に臨床データまで載るのも珍しい。次に見たいのは、このクラス共通の弱点である血液毒性と、頭蓋内での効果がどこまで非結合型濃度で説明できるかだ。

Discovery of GTA182, a Novel CNS-Active Tricyclic Amide MTA-Cooperative PRMT5 Inhibitor for MTAP -Deleted Cancers ↗

クライオEM構造に基づくポケット統合で、経口アロステリックSLC6A19阻害薬を創出

  • SLC6A19/シンロミド複合体のクライオEM構造で見つかったアロステリックポケットを標的にバーチャルスクリーニングを行い、出発ヒットを得た。
  • 別のクライオEM構造で見つかった一部重なる第二ポケットを踏まえ、両者を融合する類縁体を設計し、強力で選択的な経口化合物20に到達した。
  • 化合物20はマウスよりサルのSLC6A19に対して活性が高いが、経口投与で尿中アミノ酸排泄を用量依存的に増加させた。
💡 ポイント

膜輸送体でこれほど構造主導の設計が綺麗に決まる例は少ない。クライオEMで見つけた2つのポケットを統合し、尿中の簡便な指標でin vivoのPDまで確認している。マウスで活性が落ちる点は効力試験では厄介だが、霊長類で活性が保たれるのは安心材料だ。次はアミノ酸枯渇に対する安全域を知りたい。

Structure-Guided Discovery of Orally Bioavailable Allosteric SLC6A19 Inhibitors that Promote Urinary Amino Acid Excretion In Vivo ↗

HTS基盤でtauとLRP1受容体の結合を阻害する低分子を同定

  • 精製したLRP1リガンド結合ドメイン4を軸に、蛍光偏光、スプリットルシフェラーゼ、TR-FRETからなる定量的アッセイ群を構築した。
  • tau、RAP、ペプチドリガンドは重なる結合部位を競合し、いずれの形式でもナノモル域の親和性が観察された。
  • このプラットフォームのスクリーニングで相互作用を阻害する低分子が見つかり、tauの取り込みと伝播を抑える出発点となる。
💡 ポイント

受容体の細胞外ドメインとのタンパク質間相互作用は難標的で、3種の直交アッセイでアーティファクトを除くやり方は妥当だ。ヒットは、細胞でのtau取り込み阻害を示し、ApoEなどLRP1の他のリガンドへの広範な影響が無いと確認されるまで慎重に見たい。

High-Throughput Screening Identifies Small-Molecule Inhibitors of the Tau-LRP1 Interaction ↗

2026-10-15 6件

mRNAディスプレイ由来マクロ環がCHD4をNuRD複合体の相互作用ハブと示す

  • CHD4のSANT-SLIDEドメインに対するmRNAディスプレイで、NuRD複合体形成の要となるGATAD2Aとの相互作用を阻害する小型マクロ環状ペプチドが得られた。
  • スクリーニングはCHD4上の第二の結合部位も示唆し、CDK2AP1がそこに結合することを確認、CHD4–GATAD2A–CDK2AP1三者複合体の構造も決定された。
  • NuRDの破壊は胎児型ヘモグロビンの発現を誘導し、鎌状赤血球症などβヘモグロビン異常症に対する実証済みの治療戦略である。
💡 ポイント

一回のセレクションでヒットと生物学的知見の両方が得られた点が秀逸だ。タンパク質間相互作用面に乗るマクロ環はそのままでは創薬向きとは言いにくく、三者複合体の構造を手がかりに細胞膜透過性のある分子へ小型化できるかが私の関心事。CHD4上の第二部位はその新たな足がかりになる。関連リモデラーへの選択性も確認したい。

Macrocycle Screening against the C-Terminal Region of CHD4 Uncovers Its Role as an Interaction Hub in the Formation of the Nucleosome Remodeling and Deacetylase Complex ↗

シンコナアルカロイド由来アンモニウム塩が長時間・感覚選択的な神経ブロックを実現

天然物神経・精神イオンチャネル
  • 天然物シンコナアルカロイドを母核とするアンモニウム塩を局所麻酔薬として検討し、二環性のキンコリジン骨格が非環状・単環状類縁体より優れていた。
  • リード化合物CLA-1-3はラット坐骨神経を50時間以上遮断し、電位依存性ナトリウムチャネルを強力に阻害した。
  • 別の化合物CLA-3-5は0.30〜0.60%の濃度で最大約3時間続く感覚選択的な遮断を示した。
💡 ポイント

見出しは作用時間だが、より興味深いのは常時荷電したアンモニウムという設計だ。投与部位からの洗い流しが遅くなり、長時間作用の理由になっていそうだ。ただ50時間を超える遮断なら、有効性より先に局所の神経毒性・筋毒性のデータを見たい。

Cinchona Alkaloids-Derived Ammonium Salts for Long-Acting and Sensory-Selective Nerve Blockades ↗

二環式アミンへの置換でインダゾール系LRRK2阻害薬のG2019S選択性が拡大

  • 構造ガイドのハイブリッド化でインダゾール系LRRK2シリーズを構築。初期のピペリジン体は高活性だが、野生型とG2019S変異体の差がほとんどなかった。
  • ピペリジンをオクタヒドロシクロペンタ[c]ピロールに置換すると、活性を保ったまま選択性の幅が拡大。化合物34がこの新規ケモタイプを代表する。
  • 著者らは、次世代のパーキンソン病向けLRRK2阻害薬に向けた新たな出発点と位置づけている。
💡 ポイント

柔軟なピペリジンを縮環二環に固定するのは選択性を磨く定石で、今回は成功したようだ。ただ炭素骨格が増えた分の脂溶性と脳移行性のコストは入れ込む前に確認したい。CNS標的はどちらにもシビアだ。変異体優先の選択性が酵素アッセイだけでなく細胞でも保たれるかも要確認。

Discovery of G2019S Mutant Selective LRRK2 Inhibitors Based on an Indazole Octahydrocyclopenta[c]pyrrole-Based Hybrid Chemotype ↗

経口の非ペプチド型STAT6分解薬WW-210がマウスのアトピー性皮膚炎を改善

  • 先行のリン酸化ペプチド型STAT6 PROTACを、経口投与を意図した非ペプチド型分解薬に置き換えた。
  • WW-210は極めて低い濃度でSTAT6を分解し、他のSTATファミリーに対する選択性の幅も広い。
  • 測定可能な経口バイオアベイラビリティを示し、血液と脾臓でSTAT6を分解。アトピー性皮膚炎モデルマウスで皮膚病変の改善、血清IgEの低下、肥満細胞浸潤の減少が見られた。
💡 ポイント

STAT6は平坦で極性の高いSH2面をもつ転写因子で、阻害薬が苦戦しやすく、分解薬なら回避できる典型的な標的だ。ホスホペプチドから出発したPROTACで経口曝露を得た点が真の成果。分子量と極性をどう抑えたか、またSTATファミリー選択性が初代T細胞でも保たれるかを知りたい。

Discovery of a Potent, Selective, and Orally Efficacious STAT6 PROTAC for the Treatment of Atopic Dermatitis ↗

HTS由来の共有結合性阻害薬が活性型GTP結合KRAS G12Cを標的に

  • 既存のKRAS G12C薬は主に不活性なGDP型を捕捉し、耐性も報告されている。本シリーズは活性型のGTP結合状態を狙う。
  • HTSで得たケトインドリジン骨格とアニリン由来アクリルアミドが、switch-IIポケットのCys12に共有結合。結晶構造では、ワーヘッドがGTPアナログのγリン酸と相互作用していた。
  • 最適化で得た化合物17は前臨床動物種で経口吸収性を示し、KRAS–cRAF結合とERKシグナルの阻害を持続させ、膵臓がん異種移植モデルで完全退縮を示した。
💡 ポイント

γリン酸を使ってワーヘッドを位置決めする発想が巧みで、GTP型への選択性がポケットだけでなくヌクレオチド自体に由来する。比べたいのはRAS(ON)三者複合体阻害薬で、あちらはシクロフィリンAを要するが本系は不要だ。アクリルアミドの反応性とプロテオーム全体でのシステイン選択性も、GDP型結合薬以上に重要になる。

Discovery of Novel Oral Covalent Inhibitors Targeting Active GTP-Bound KRAS G12C with Potent Antitumor Activity ↗

共有結合フラグメントがSHP2アロステリック・ラッチ部位のリジンに到達

  • 求電子剤先行型の共有結合フラグメントスクリーニングとリガンド先行型の戦略を組み合わせ、ホスファターゼSHP2のアロステリック・ラッチ部位のリジンを標的とした。
  • 計算と実験の両面から結合様式が裏づけられ、この部位で初の強力かつ細胞活性をもつアロステリック共有結合阻害薬を得たと著者らは述べる。
  • ラッチ部位が共有結合的に攻略可能であることを示し、新たなSHP2アロステリック骨格への道を開く。
💡 ポイント

リジンを狙う共有結合化学はシステインよりはるかに少なく、SHP2そのものよりも、リジンで細胞活性ヒットを実際に出せるワークフローが収穫だ。気になるのは反応性と安定性のバランスで、リジン向け求電子剤は加水分解や可逆性の問題を抱えやすい。プローブと呼ぶ前にプロテオーム全体の選択性データがほしい。

Fragment-Based Covalent Targeting of Lysines at the Allosteric Latch Site of SHP2 ↗

2026-10-14 8件

ベンゾチオフェンの最適化で結核菌MprBヒスチジンキナーゼを阻害、病原性を抑制

  • 先行ヒットBTP15はMprB阻害でファゴソーム脱出を防ぎ、結核菌による宿主細胞死を抑えるが、薬物動態が不良だった。
  • 新規ベンゾチオフェン誘導体を、MprB阻害、ミクロソーム安定性、毒性、THP-1およびMRC-5細胞でのex vivo効果で評価した。
  • 菌を直接殺さず病原性だけを阻むアプローチで、耐性圧力を下げられる可能性がある。
💡 ポイント

抗病原性戦略は紙の上では魅力的だが、殺菌性の指標なしで有効性を示すのが難所だ。BTP15の弱点はPKだったので、安定性の改善がin vivo曝露につながるか、そして感染細胞でMprBの標的結合がきれいに示されているかを最も注意して見たい。

Antivirulence Benzothiophenes Inhibit Intracellular Mycobacterium tuberculosis by Targeting the Sensor Histidine Kinase MprB ↗

エルトロンボパグからDCL1191へ、「undruggable」なTFEBの経口阻害薬

  • 長らくundruggableとされた転写因子TFEBに対し、TFEB阻害活性とTpo-Rアゴニスト活性を併せ持つエルトロンボパグを出発点にした。
  • SAR最適化でDCL1191を得た。TFEBに結合してDNA結合を阻害し、Tpo-RやMITFへの活性は低い。計算とミュータント解析が結合モードを支持する。
  • TFEB標的遺伝子の転写を抑えてオートファジー流束を遮断し、経口バイオアベイラビリティを示す。オートファジー亢進型の膠芽腫細胞で活性があった。
💡 ポイント

既存薬の副次活性から入る戦略は、ドラッグライクな性質を引き継げるので転写因子攻略として賢い。本当の試金石はMITF/TFE3ファミリーで、近縁パラログへの選択性が保てれば、オートファジー風味の細胞毒ではなく本物のツール化合物になる。

Development of DCL1191 as a Potent, Selective and Orally Bioavailable Inhibitor for Autophagy-Associated Transcription Factor EB (TFEB) ↗

L2ループに届くHDAC6阻害薬を共結晶構造で設計、肺がん細胞でオートファジーを誘導

  • 先行化合物とゼブラフィッシュHDAC6触媒ドメインの結晶構造をもとに、第2世代のHDAC6阻害薬を設計した。
  • 2つのリード化合物の共結晶構造でL2ループのS531との相互作用を確認。細胞ではヒストンのアセチル化に明確な変化なく、アセチル化チューブリンが増加した。
  • 1化合物はオートファジー経路の活性化を介してA549細胞の2D・3D培養での生存率を低下させ、相分離にも影響した。
💡 ポイント

アイソフォーム選択性を狙うならL2ループが本命だ。CD2ポケットは保存されているがループは違う。ヒストンが動かずアセチル化チューブリンだけ上がるのは、選択性を信じる前に見たい読み出しだ。ただオートファジーの話に乗る前に、HDAC全体のパネルとPKは確認したい。

Structure-Based Design of HDAC6 Inhibitors Targeting the L2 Pocket: Modulating Autophagy and Liquid−Liquid Phase Separation in Lung Cancer ↗

N-ヒドロキシインドール系PDIA3阻害薬、呼吸器ウイルスに広く効く宿主標的抗ウイルス薬

  • 糖鎖修飾されたウイルスエンベロープタンパク質のフォールディングに関わる小胞体酸化還元酵素PDIA3は、未開拓の宿主標的である。
  • AV22に代表される新規N-ヒドロキシインドール-2-カルボキサミド類がPDIA3を阻害し、主要なヒト呼吸器ウイルスに幅広い活性を示した。
  • コロナウイルス感染細胞では非感染性粒子の放出が増え、スパイクのジスルフィド結合形成が低下した。
💡 ポイント

宿主標的の抗ウイルス薬は耐性を回避できるが、PDIA3は非感染細胞でも実際に働くので、治療域がすべてだ。N-ヒドロキシ基も個人的には赤信号で、金属結合と代謝の弱点のどちらも効いてくる。まず細胞毒性マージンとミクロソーム安定性を見たい。

Development of N-Hydroxyindole-2-Carboxamides as New Host-Targeted Broad-Spectrum Antiviral Agents Against Human Respiratory Viruses ↗

計算で選んだビルディングブロックで、40万種のペプチド様DELの多様性を拡張

  • 3サイクルのペプチド様DEL(403,200化合物)を構築し、市販アミノ酸4,774種の化学空間モデルで不足しているビルディングブロックを特定した。
  • 3種類の標的に対するアフィニティ選択でライブラリ性能を比較した。
  • 炭酸脱水酵素IIに対する選択で既知のスルホンアミド型ファーマコフォアが得られ、計算支援設計の妥当性を示した。
💡 ポイント

CA IIでスルホンアミドが戻るのは想定内のサニティチェックであり、リード様空間をカバーした証明ではない。ペプチド様DELは大きく極性の高いヒットが出がちなので、選択された化合物のうちDNAを外して使える物性領域に入るものがどれだけあるか、残り2標的の結果がどうだったかで評価したい。

Design, Synthesis, and Comparative Selection Analysis of a Chemically Diverse Peptide-Like DNA-Encoded Library ↗

チアゾールアミド系PI4KIIIβ/HDACデュアル阻害薬、宿主標的でHCVに挑む

  • HCVでは直接作用型抗ウイルス薬への耐性が課題だが、宿主因子PI4KIIIβとHDACのデュアル阻害はこれまで報告がなかった。
  • チアゾールアミド系デュアル阻害薬を設計・合成し、評価した。
  • リード化合物は両標的に強い酵素阻害を示し、抗HCV活性も確認された。
💡 ポイント

DAAで大半が治癒する現在、宿主標的のHCV薬は事業面で説明が難しく、PI4KIIIβ/HDACのデュアルは毒性リスクも増やす。マルチターゲット設計としては良い演習だと読むが、治療域が本物と言えるには細胞毒性とキナーゼ選択性のデータがほしい。

Discovery of Thiazolamide-based PI4KIIIβ/HDAC Dual Inhibitors with Potent Activity against Hepatitis C Virus ↗

経口STING阻害薬D4、重症急性膵炎モデルで膵障害を軽減

  • SAR展開でD4を見いだした。STINGに直接結合し、オリゴマー化とTBK1/IRF3シグナルを阻害する。
  • マクロファージでは貪食能、オートファジー流束、ミトコンドリア機能を回復させ、NLRP3関連のパイロトーシスを抑えた。
  • D4は経口曝露が得られ高用量でも忍容性が良好で、セルレイン/LPSモデルで膵障害と酵素値を低下。STINGノックダウンでも同様の保護が見られた。
💡 ポイント

STINGはがん向けのアゴニストを追う例が多く、急性炎症に経口阻害薬という選択は毛色が違う。ノックダウンで表現型が再現されるのは機序面で安心材料だが、STINGのリガンドポケットは種差が大きいことで悪名高い。種間での挙動と、患者で急性期の投与窓が現実的かは確かめたい。

Discovery of Novel STING Inhibitors for the Treatment of Severe Acute Pancreatitis ↗

ミレパチン由来ハイブリッドがチューブリンとHDAC8を同時阻害、卵巣がんモデルで効果

  • 天然物ミレパチンにHDAC阻害薬の主要ファーマコフォアを融合し、チューブリン/HDACデュアル阻害薬を構築した。
  • リード化合物6は12種のがん細胞株に広く抗増殖活性を示し、チューブリン重合とHDAC8を阻害。HDAC1、4、6に対してHDAC8選択的だった。
  • 卵巣がん異種移植モデルで、良好な安全性とともに腫瘍増殖を抑制した。
💡 ポイント

HDAC8は定番のHDAC6/クラスIよりも競合が少なく、チューブリン結合部位との組み合わせは機序として筋が通る。ただデュアルハイブリッド特有の懸念は残る。2つの活性が足並みをそろえて伸びることは稀なので、in vivo効果にチューブリン側だけでなくHDAC8阻害も寄与している証拠がほしい。

Discovery of a Novel Dual Inhibitor Targeting Tubulin and Histone Deacetylase 8 for Treatment of the Ovarian Cancer ↗

2026-10-13 5件

長く半剛直なリンカーがVHL型HDAC6分解薬を駆動、抗白血病活性を示す

  • 固相合成法により、ボリノスタット由来HDAC6 PROTACのVHLリガンド、出口ベクター、リンカーを系統的に変化させた。
  • 長く半剛直なリンカーで分解が最も効率的になり、主要化合物はMM.1SおよびMV4-11細胞でHDAC6を優先的に分解した。
  • HDAC阻害活性がほぼ同等の非分解性対照は増殖抑制が明らかに弱く、分解そのものが効いていることを示した。
💡 ポイント

酵素阻害を揃えた非分解性対照は、分解と単なる阻害を切り分ける実験で、結果はPROTACに有利だ。ただボリノスタット類似弾頭では選択性が排他的でなく優先的にとどまる点が弱みで、より高選択的なリガンドに替えれば改善しうる。

Solid-phase synthesis and structure-degradation relationships of VHL-recruiting PROTACs for preferential histone deacetylase 6 degradation ↗

フェルラ酸ベースのPROTACがTLR4を分解し血管内皮を保護

  • 活性の弱い天然物フェルラ酸を基にしたPROTAC 6種を作製し、HUVECでTLR4分解と細胞遊走を評価した。
  • 主要化合物FP-4はTLR4を分解し、TLR4/MyD88–NF-κBシグナルとTNF-α、ICAM-1、VCAM-1の発現を抑えた。
  • ゼブラフィッシュでも保護効果が確認され、PROTACの応用をがん以外へ広げた。
💡 ポイント

弱い天然物リガンドをPROTACで救う発想は巧みだが、TLR4は膜受容体であり、どのE3リガーゼが関与するか、三者複合体への依存性を示す証拠はまだ薄い。機構を信じる前に、リガーゼ阻害薬やプロテアソーム阻害薬によるレスキュー実験を見たい。

Enhancing Natural Product Therapy with PROTACs: Targeted Degradation of TLR4 Confers Potent Endothelial Protection ↗

G蛋白質経路に完全偏向したGPR183作動薬TUG-2604、オキシステロール並みの効力

  • 拮抗薬NIBR189に由来する仮想スクリーニングヒットを構造活性相関で最適化し、G蛋白質シグナルに完全に偏向したGPR183完全作動薬を得た。
  • 主要化合物TUG-2604は、内因性オキシステロール7α,25-OHCと同等の効力・効果を示しつつ、β-アレスチン2を動員しない。
  • 単独ではヒト樹状細胞の遊走を誘導せず、オキシステロール誘導の遊走を阻害した。
💡 ポイント

拮抗薬由来のヒットを完全作動薬に変え、しかもG蛋白質側に偏らせるのは容易でなく、遊走の結果はβ-アレスチン側が走化性を担う可能性を示唆する。炎症領域でGPR183を評価するなら、2つのシグナル経路を切り分けるきれいなツールになる。

Development of Potent G Protein Pathway-Biased GPR183 Agonists ↗

スキャフォールドホッピングで2-OG非競合型KDM6B阻害薬を発見、子宮頸がん異種移植で有効

  • スキャフォールドホッピングに基づく仮想スクリーニングで、子宮頸がんで高発現するJmjC型脱メチル化酵素KDM6Bに対するジアリールピリミジン-グアニジン系列を見いだした。
  • 最適化化合物は酵素阻害活性でGSK-J4に匹敵するが、2-オキソグルタル酸に対して非競合という点で、多くのJmjC阻害薬と作用様式が異なる。
  • 酵素レベルではpan-KDM阻害を示したものの、C33A細胞ではH3K27me3を選択的に上昇させ、異種移植腫瘍の増殖を抑えた。
💡 ポイント

JmjC阻害薬は2-OG結合部位の化学と極性の重さに悩まされがちなので、非競合型の系列は別の出発点になる。酵素段階のpan-KDM活性が細胞でH3K27me3選択性に変わる理由と、グアニジンが膜透過性に与える影響を知りたい。

Discovery of Diaryl Pyrimidine-Guanidine Derivatives as Jumonji C Domain-Containing Lysine Histone Demethylase (KDM) Inhibitors with In Vivo Anti-Cervical Cancer Activity ↗

STK33男性避妊薬インダゾールの溶解性とCLK4オフターゲットを改善

  • CDD-2807の母核である3-(ビフェニルエチニル)-1H-インダゾールについて、構造活性・構造物性相関を調べ、低い速度論的溶解度の改善を図った。
  • CDD-3094はナノモルの細胞活性を維持しつつ溶解性を高め、hERG阻害を低減し、広範なキナーゼパネルでもクリーンだった。
  • 共結晶構造に基づき主要オフターゲットCLK4を回避する改変を行い、選択性の高い生化学ツールを得たが、細胞活性は低下した。
💡 ポイント

溶解性はCDD-3094で解決し、次に選択性を得た代わりに細胞活性を失うという、物性と活性のトレードオフの典型例だ。安全性の基準ががん領域よりはるかに高い避妊薬では、生の活性よりCLK4の識別が重要で、次の課題は膜透過性の回復になる。

Design, Synthesis, and Pharmacological Profiling of Serine/Threonine Kinase 33 (STK33) Inhibitors for Nonhormonal Male Contraception ↗

2026-10-12 6件

ドネペジル由来のBuChE/FAAHデュアル阻害薬をアルツハイマー病向けに設計

  • ドネペジルを基にした誘導体を設計・合成し、ヒトブチリルコリンエステラーゼとFAAHの二重阻害薬として評価した。
  • リード化合物G15は両酵素をバランスよく阻害し、活性はサブマイクロモルからマイクロモル域だった。
  • セリン加水分解酵素阻害薬で問題になりやすいカルボキシルエステラーゼCES1/2に対しても一定の選択性を示した。
💡 ポイント

二重標的ハイブリッドで両酵素にバランスよく効かせるのは難しく、G15は有用な出発点になる。ただしカルボキシルエステラーゼへの選択性は控えめで、多標的という狙いを信じるにはin vivoの曝露データが欲しい。

Design, Synthesis and Evaluation Donepezil-Based Dual BuChE/FAAH Inhibitors for Alzheimer's Disease Therapy ↗

インダゾールと二環式ピロリジンのハイブリッド骨格で変異体選択的LRRK2阻害薬を探索

  • インダゾールとオクタヒドロシクロペンタ[c]ピロールを構造指針で組み合わせ、パーキンソン病向けの新しいLRRK2阻害薬骨格を得た。
  • 初期のピペリジン含有アナログは高活性だったが、野生型とG2019S変異体の区別はほとんどつかなかった。
  • ピペリジンを縮環二環式アミンに置き換えることで、この選択性の幅を広げようとした。
💡 ポイント

野生型とG2019S変異体の差が小さいことはLRRK2リードが行き詰まる典型的な理由で、変異体への偏りを生む骨格変更は注目に値する。細胞内の生理的ATP濃度でもその偏りが保たれるか、二環式アミンが脳移行性とクリアランスにどう影響するかを見たい。

Discovery of G2019S Mutant Selective LRRK2 Inhibitors Based on an Indazole Octahydrocyclopenta[c]pyrrole-Based Hybrid Chemotype ↗

ビスカテコール型シデロフォアがアンピシリンを多剤耐性緑膿菌へ送達

  • 細菌の鉄取り込み系を利用するトロイの木馬戦略で、β-ラクタム薬をグラム陰性菌の外膜越しに届ける設計。
  • アンピシリンをモノカテコール、ビスカテコール、カテコール–ヒドロキサム酸型のシデロフォアに結合し、系列を比較した。
  • ビスカテコール型結合体が選択的で、多剤耐性緑膿菌にまでアンピシリンの効果を広げたと報告されている。
💡 ポイント

古いペニシリンを送達担体の変更だけで緑膿菌に効かせた点は、シデロフォア戦略の明快な実証だ。次に確認したいのは血清中でのリンカー安定性と、耐性菌が取り込み受容体の発現を落とすだけで逃れてしまう可能性である。

A Selective Bis-Catecholate Siderophore-Ampicillin Conjugate Expands Activity against Multidrug-Resistant Pseudomonas aeruginosa ↗

酸化されやすいチオエーテルをラクタム架橋に置換したIL-11拮抗ペプチド

  • IL-11結合ペプチドの酸化に弱いチオエーテルをラクタム架橋に置き換え、リンカー長を系統的に検討した。
  • 最適化したアナログ4L6–16は、IL-11に良好な親和性で結合し、元のペプチドより強い拮抗作用を示した。
  • 腎線維症の細胞モデルと動物モデルの両方で腎保護効果が確認された。
💡 ポイント

チオエーテルからラクタムへの置換はペプチド安定化の定石だが、保存性だけでなく拮抗活性まで改善した点は心強い。結合はまだ中程度のナノモル域で詰める余地があり、次に知りたいのは血漿中のタンパク質分解耐性だ。

Development of a Lactam-Bridged Peptide as Interleukin-11 Antagonist for Renal Fibrosis Treatment ↗

動力学的ターゲットガイド合成で高活性なヒドロキサム酸型LasB阻害薬を取得

  • 既存の結晶構造を手がかりに、動力学的ターゲットガイド合成で緑膿菌の病原因子エラスターゼLasBの阻害薬を組み上げた。
  • 広範なSAR検討により、非常に高活性で、ヒトのオフターゲット群に対する選択性も良好なヒドロキサム酸阻害薬を得た。
  • 化合物はLasBによる肺上皮細胞の傷害を抑え、in vivoでの有効性を示し、肺内曝露は生化学的活性を上回った。
💡 ポイント

酵素自身に最適なフラグメントの組み合わせを選ばせる手法は、金属プロテアーゼのポケットを攻める賢い入り口だ。肺内PKが生化学活性を上回るというデータは抗病原性プログラムに欠けがちな点でもある。ヒドロキサム酸は代謝や亜鉛結合の難点を抱えるので、他の金属酵素へのオフターゲット評価がまず気になる。

Kinetic Target-Guided Discovery of Selective Nanomolar Hydroxamic Acid–Based Inhibitors of Pseudomonas aeruginosa Elastase LasB ↗

ビスホスホン酸をマスクして酸性スフィンゴミエリナーゼ阻害薬の細胞内活性を向上

  • 酸性スフィンゴミエリナーゼのアミノビスホスホン酸阻害薬ARC39をマスクし、細胞への取り込みを改善した。
  • マスク化誘導体は細胞でナノモル域の活性を示し、親化合物より約2桁強力だった。
  • 細胞内取り込みや安定性などの性質も詳しく調べられている。
💡 ポイント

ホスホン酸のマスク化は見慣れた手法だが、ASMには強力で細胞活性のあるツールが乏しく、細胞での約100倍の向上はターゲットバリデーションの面で意味が大きい。ASMが働くリソソームでマスクがきれいに外れるかが、プローブで終わるかリードになるかの分かれ目だ。

Masked Bisphosphonate Inhibitors of Acid Sphingomyelinase: Improved Cell Penetration and Potency ↗

2026-10-10 7件

脳移行性のコルヒチン部位チューブリンリガンド、神経膠腫の臨床候補に

  • 脳腫瘍で承認されている脳移行性の経口薬はテモゾロミドとボロシデニブのみで、新たな選択肢が求められている。
  • SAR研究から脳移行性の高いチューブリンリガンドの新クラスが見つかり、共結晶構造でコルヒチン部位への結合と、コルヒチン結合状態に対してβT7・αT5ループが反転した構造が確認された。
  • 置換基への感受性が高く不可欠な部分構造は少ないことがSARで示され、化合物40が臨床候補に選ばれた。
💡 ポイント

実際に血液脳関門を通過するチューブリン結合剤は、P-gpによる排出か神経毒性で脱落するのが常なので、脳曝露が高く構造活性相関が締まった系列は目を引く。βT7/αT5ループの反転は、手元のコルヒチン部位骨格をドッキングし直す価値がある手がかりだ。慢性投与での神経毒性は依然として問題として残る。

Discovery and Optimization of a Novel Brain-Penetrant Colchicine-Binding Site Ligand for Treatment of Glioma ↗

DNMT1 PROTAC「B7」、肝線維症で触媒機能と非触媒機能を同時に遮断

標的タンパク質分解呼吸器・線維症
  • DNMT1は触媒作用と非触媒作用の両方で線維化を促すため、DC-517を出発点に、両機能を同時に抑えるPROTAC分解誘導薬を設計した。
  • リード化合物B7はDNMT1をユビキチン・プロテアソーム系で分解し、細胞実験でゲノム全体のDNAメチル化を低下させ、線維化促進反応を抑えた。
  • 動物実験でもB7はDNMT1の発現を下げ、コラーゲン沈着の減少と肝機能の改善という形で肝線維症を軽減した。
💡 ポイント

活性部位阻害薬では足場としての役割が残るため、DNMT1は阻害よりも分解が理にかなう典型例だ。気になるのは肝臓への選択性と、増殖組織で必須の維持型メチル基転移酵素を除いたときの影響で、線維症モデルはどちらにも甘い。

Discovery of Potent, Selective DNMT1 PROTAC Degraders: Simultaneous Blockade of Catalytic and Non-Catalytic Functions for Liver Fibrosis Therapy ↗

ボロン酸型ENPP1阻害薬、腫瘍環境のpH変動下でも活性を維持

  • ENPP1は腫瘍微小環境でcGAMPを加水分解し、STING依存の抗腫瘍免疫を弱める。
  • リン酸型阻害薬STF-1084を手がかりに、ボロン酸を亜鉛結合基とする非ヌクレオチド系阻害薬を設計し、pH変動に強い化合物36を得た。
  • 化合物36は培養系でcGAMP介在のSTING活性化を高め、同系CT26腫瘍モデルでは単剤で腫瘍増殖を抑制し、オキサリプラチンとの併用で相乗効果を示した。毒性は認められなかった。
💡 ポイント

リン酸・ホスホン酸型のENPP1リガンドは膜透過性と曝露に苦しんできたので、ボロン酸の亜鉛結合基への置換は筋の良いルートだ。酵素が働く酸性環境での活性を狙った設計が巧い。ただ腹腔内投与での単剤効果は控えめで、次に知りたいのは経口曝露とボロン酸の安定性だ。

Development of pH-Resilient Boronic Acid ENPP1 Inhibitors for STING-Mediated Cancer Immunotherapy ↗

結合速度論を活用してHDAC2選択的阻害薬KTT-1を発見

  • 酵素と阻害薬の結合について熱力学だけでなく速度論も評価することで、HDAC2選択的阻害薬KTT-1(化合物12)を見いだした。
  • HDAC2との複合体のX線結晶構造とモデル化合物の量子化学計算から、2-フラニル基が選択性に寄与すると考えられる。
  • 細胞では高度に相同なHDAC1よりHDAC2を優先的に阻害して神経突起伸長を促し、ストレス脆弱性マウスでは記憶とうつ様行動を改善した。
💡 ポイント

HDAC1/2の活性部位はほぼ同一だが、IC50だけでなく滞留時間で選別すれば突破口になる。フラニル基の寄与が結晶構造とQMの両面から裏づけられているのも検証しやすい。細胞でHDAC2優先を示す例は珍しく、脳内曝露を伴うニューロンでの再現を見たい。

Discovery of an HDAC2-Selective Inhibitor via Enzyme−Inhibitor-Binding Thermodynamics/Kinetics as a Prospective Neurological Disorder Drug ↗

キメラ型Hsp90β選択的阻害薬、選択性を保ちつつPKを調整

  • Hsp90の汎阻害薬は幅広い阻害が災いして臨床評価が進まず、インダゾロン系のHsp90β選択的化合物が追求されてきたが、薬物様性の確保に長い最適化を要していた。
  • 本研究は、北側のインダゾロン部とその南西側の置換基を同時に修飾し、各領域の長所を組み合わせられるかを検証した。
  • 得られたキメラ型阻害薬は、Hsp90βへの親和性と選択性を保ったまま、主要な薬物動態パラメータを調整できた。
💡 ポイント

独立に最適化した2つのベクターを統合するのは堅実な一手で、それでも選択性が保たれたのは、β特異的なポケットが想像以上に改変に寛容だということだろう。決め手になるのは組織曝露と忍容性で、汎阻害薬が躓いたのもまさにそこだ。

Chimeric Hsp90β-Selective Inhibitors Confer Enhanced Affinity, Selectivity, and Drug-Like Properties ↗

DELヒットから脳移行性の可逆的MAGL阻害薬MAGLi 432へ

  • DNAエンコード化合物ライブラリー(DEL)由来のビシクロピペラジン系ヒットを構造ベースで最適化し、可逆的MAGL阻害薬である化合物1.5(MAGLi 432)に到達した。
  • 高い活性、他のセリンヒドロラーゼに対する選択性、CNS創薬に適した性質を兼ね備え、ラットでの経口半減期も良好だった。
  • ヒト脳ホモジネートでMAGLを阻害し、マウス神経炎症モデルでも有効性を示した。最適化はトランスレーショナルな「Five-Star Matrix」の枠組みで進められた。
💡 ポイント

慢性投与でCB1の脱感作に悩まされた不可逆型MAGL薬を思えば、まず注目すべきは可逆性だ。非共有結合のDEL由来ケモタイプでヒト脳組織でも標的結合を確認できているのは良い雛形で、ヒト組織での評価を終盤でなく早期に回す習慣は真似したい。

Translational Application of the Five-Star Matrix for the Structure-Guided Optimization of a Bicyclopiperazine DEL Hit into Bcpz 1.5: A Potent Monoacylglycerol Lipase Inhibitor with Functional Inhibition in Human Brain Homogenate and Efficacy in Neuroinflammatory Models ↗

ライブラリーの0.1%未満のスクリーニングでQPCT/L阻害薬BI-3614を獲得

  • QPCTとゴルジ体局在のQPCTLはN末端グルタミンをピログルタミン酸へ変換し、Aβオリゴマー化、ケモカインの安定性、CD47–SIRPαシグナルに関わる。
  • 既知阻害薬の生理活性コンフォメーションとの類似性に基づき、社内ライブラリーの0.1%未満を選ぶ仮想スクリーニングで新規ケモタイプが得られ、ヒット探索が大きく加速した。
  • キナゾリジノン系列の構造ベース最適化により、従来の阻害薬より活性が向上した細胞用ツール化合物BI-3614が得られた。
💡 ポイント

ライブラリーの0.1%未満しか回さずに新しいケモタイプが出たのは、コンフォメーション類似性検索の効率の良さを示している。従来のQPCT阻害薬は金属結合基に依存していたので、細胞で働く新系列はCD47のピログルタミン酸化の研究に歓迎だ。まず確認したいのはQPCTとQPCTLの選択性である。

Accelerated Hit Identification and Optimization of a Novel Class of Cellularly Active QPCT/L Inhibitors ↗

2026-10-09 6件

ポーズ予測の精度は、骨格あたり結晶構造約5個で頭打ちに

  • オープンサイエンスのCOVID Moonshotによる403件のSARS-CoV-2主プロテアーゼ構造を用い、新規結晶構造をいくつ取得する価値があるかを検証した。
  • 類似リガンドの参照構造が最良のポーズ予測を与え、成功率はBemis-Murcko骨格あたり約5構造で頭打ちとなり、リード系列では95%を超えた。
💡 ポイント

構造生物学に具体的な予算の目安を与える結果で、骨格あたり約5構造を超えると、追加のソーキングがポーズ予測に与える利得は小さい。ただしMproは剛直で扱いやすいポケットなので、柔軟なキナーゼや誘導適合型の標的にこの数字をそのまま当てはめるべきではない。

How Many Crystal Structures Do You Need to Trust Your Docking Results? ↗

物性駆動設計で吸入sGC刺激薬frespaciguatを創出、COPD合併肺高血圧向け

  • 経口sGC刺激薬は全身性低血圧や換気血流不均衡の悪化を招き得るため、肺に局在させる設計が求められた。
  • SARとPKの検討から、高い全身クリアランスと低い膜透過性が肺選択性の鍵と判明した。
  • 化合物15(frespaciguat、MK-5475)は極めて強力で標的結合滞留時間が長く、吸入後の非結合型肺/血漿曝露比は200倍超。ラット慢性低酸素モデルで有効性を示した。
💡 ポイント

高クリアランス・低透過性をあえて狙う設計は経口薬の発想と逆で、吸入剤プログラムに有用な指針となる。滞留時間と肺内保持の組み合わせが、ヒトで治療域として再現するかを確認したい。

Frespaciguat (MK-5475): A Novel Inhaled Soluble Guanylate Cyclase Stimulator for Pulmonary Hypertension Associated with COPD ↗

親油性を管理した最適化でPERK阻害薬APL-11056に到達

  • 文献由来で活性は中程度ながらキナーゼ選択性とPKに優れるPERK阻害薬を出発点に、log DとLLEを指標にリード最適化を進めた。
  • その結果、強力かつ選択的で、生体内PKに優れるPERK阻害薬APL-11056(化合物49)が得られた。
  • 高い膜透過性は、コアのベンズアミドのα位にあるフッ素と関連しており、排出トランスポーターによる認識を抑えていると考えられる。
💡 ポイント

活性を追うのでなくLLEでSAR全体を導いた姿勢が読み解きやすさを生んでいる。ベンズアミドα位のフッ素で排出を回避する手法は、自分のアミド系列にも使えそうだ。PERKのISR生物学は過去に阻害薬を苦しめた経緯があり、PK表よりも忍容性データが重要になる。

Discovery of a Protein Kinase R-like Endoplasmic Reticulum Kinase (PERK) Inhibitor Suitable for Clinical Progression ↗

経口POLQポリメラーゼ阻害薬、オラパリブ併用でBRCA2欠損腫瘍を退縮

  • POLQはマイクロホモロジー媒介末端結合を担い、相同組換え修復欠損がんで合成致死の標的となる。
  • 弱い生化学的ヒットの最適化によりベンゾイミダゾール/プリン系阻害薬が得られ、化合物37は強力・選択的で経口活性を持つ。
  • BRCA2欠損DLD-1細胞で増殖抑制とオラパリブの増強を示し、HR正常細胞では効果なし。オラパリブとの慢性経口投与で異種移植腫瘍が退縮した。
💡 ポイント

経口で、しかもHR欠損環境に選択的なポリメラーゼ阻害薬は、この標的に欠けていたものだ。HR正常細胞で効かないという対照が要となる。次は耐性と、ヘリカーゼ領域を狙うアプローチとの比較を見たい。

Discovery of a Novel Series of Benzimidazoles/Purines as Potent, Selective and Orally Active Inhibitors of the DNA Polymerase Activity of POLQ ↗

スルホニウム修飾ペネモカンジンがクリプトコッカスの自然耐性を克服

天然物感染症
  • 天然物pneumocandin B0骨格への共有結合的なスルホニウム修飾により、Candidaに有効で、Cryptococcus neoformansの自然耐性も覆す誘導体が得られた(MIC最小2 μg/mL)。
  • 修飾は真菌膜の透過性を高めて脱分極を起こし、グルカン合成酵素の阻害も強めた。
  • 化合物3hと5hは耐性獲得リスクが低く、安全性とPKも良好で、生体内でも抗真菌効果を示した。
💡 ポイント

エキノキャンディンはクリプトコッカスに効かなかったため、膜に作用するカチオン性基を足して活性を戻すのは、検証済み骨格の巧みな再利用だ。膜破壊は選択性の幅を狭めるリスクがあるため、宿主細胞毒性と作用機序の寄与配分を精読したい。

Sulfonium Modification of Echinocandins: An Effective Strategy to Combat Intrinsically Resistant Cryptococcus via Membrane Disruption and Enhanced Cell Wall Biosynthesis Inhibition ↗

ULK1選択的PROTAC、阻害薬より長くオートファジーを抑制

  • ATP競合型阻害薬ではULK1とほぼ同一のULK2を見分けにくいため、セレブロンを動員する分解誘導剤が設計された。
  • 構造指導型の最適化でMR-9036が得られ、ULK2やIMiDのネオ基質に影響せずULK1のみを分解する。三者複合体形成とプロテアソーム依存性も確認された。
  • 化合物除去後も、臨床段階のULK1/2阻害薬DCC-3116より長くオートファジー抑制が持続し、KRAS G12C変異NSCLCモデルで抗腫瘍効果を示した。
💡 ポイント

パラログ間の選択性は、占有率駆動の薬剤に対して分解誘導剤が優位に立てる領域で、これはその好例だ。次に見たいのは、生体内でULK2の代償が起きるか、そして実際の薬物曝露下でも洗い流し後の持続性が保たれるかである。

Discovery and Optimization of Isoform Selective ULK1 Degraders to Enhance Antitumor Activity in KRAS-Mutant Cancer ↗

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