本日はサイエンス6件。経口STING阻害剤、BRD4リスクを取り除いたTLR7/8拮抗薬、マウスで機能させるBRD9 PROTAC、溶媒込みのリガンド歪み計算、抗微小管ピロロキノリン、グリオーマ向けBCL9/β-カテニン阻害剤。業界ニュースはLilly–Metisの脂質ナノ粒子提携とIsomorphic Labsの評価額報道の2件です。
2026-10-21 · ⚗️BRD9 / CRBN- and VHL-recruiting PROTACs · ACS Chemical Biology
- dBRD9やVZ185など広く使われるCRBN系・VHL系のBRD9分解薬は、BRD9自体の配列が高度に保存されているにもかかわらず、マウス細胞では活性が大きく低下する。
- 原因はE3リガーゼの種差、特にCrbnのI391残基とVHLの構造差にあり、三者複合体の形成を妨げていると考えられる。
- ヒトCRBNまたはVHLの発現、あるいはCrbnI391V変異の導入で、マウス細胞での活性が回復し、生体内のBRD9分解も向上した。
💡 ポイントヒト細胞株では見事に効くPROTACが、マウスの薬効試験では効かない。そんな経験のある人にはなじみのある話だ。げっ歯類での分解薬のPK/PDは、化合物ではなくE3の違いで失敗しうるので、CrbnI391Vやヒト化E3のモデルは早めに用意する価値がある。生体内で陰性でも、種をまたいだ三者複合体形成を調べるまでは、そのシリーズを打ち切るべきではない。
Improving PROTAC-Mediated Degradation in Mouse Models: BRD9 as a Case Study ↗
2026-10-21 · ⚗️Tubulin / pyrrolo[3,2-c]quinoline antimitotics · Journal of Medicinal Chemistry
- 1H-ピロロ[3,2-c]キノリンのライブラリを合成してSARを整理し、ナノモルレベルの低い濃度で増殖を抑え、正常線維芽細胞に対する選択性が非常に高い化合物を得た。
- 最良の誘導体は、ダウノルビシン耐性株やパクリタキセル耐性株でも活性を保ち、排出比も低く、交差耐性が限定的であることを示唆した。
- リード化合物は吸収が速く、半減期は中程度で、脳移行性は限定的だったが、ゼブラフィッシュ胚への毒性は治療域の狭さを示した。
💡 ポイントP-gp排出を回避する微小管作動薬はいつでも関心を集めるし、排出比の低さと耐性株での活性維持は最初のフィルターとして妥当だ。ゼブラフィッシュの結果は正直な落とし穴で、強力な抗有糸分裂薬は安全域が狭いことが多く、培養細胞で線維芽細胞に選択的でも安全性の答えにはならない。次は結合部位と、この骨格をどこまで治療域の広い方向に調整できるかを見たい。
Design, Synthesis, and Biological Evaluation of 1H-Pyrrolo[3,2-c]quinolines as Potent and Selective Antitubulin Agents Active against Drug-Resistant Cell Lines ↗
2026-10-21 · ⚗️STING / palmitoylation-blocking inhibitor · Journal of Medicinal Chemistry
- 研究チームは、インターフェロン異常症や自己免疫疾患に関わる自然免疫アダプターSTINGの阻害剤として、テトラヒドロピラゾロ[1,5-a]ピラジン骨格のシリーズを構築した。
- リード化合物37は、細胞での強いSTING阻害に加え、良好な経口曝露と安全性を示した。
- 作用機序はSTINGのパルミトイル化の阻止で、下流シグナルの活性化を抑える。
- 経口投与により、化学物質誘発の急性モデルやTrex1欠損マウスなどで炎症が軽減した。
💡 ポイントSTING阻害剤はこれまでツール化合物か共有結合性のものが中心だったので、パルミトイル化を止める経口投与可能なケモタイプは、標的への別のアプローチになる。実際にCys91ポケットに結合するのか、もっと上流で働くのかが気になる。他のパルミトイル化タンパク質への選択性がそこで決まるからだ。自己免疫疾患への適用では、Trex1欠損マウスの結果が説得力を持つ。
Discovery of Novel Orally Bioavailable STING Inhibitors with 4,5,6,7-Tetrahydropyrazolo[1,5-a]pyrazine Moiety for STING-Mediated Inflammatory Disorders ↗
2026-10-21 · ⚗️TLR7/TLR8 / dual small-molecule antagonist · Journal of Medicinal Chemistry
- 2-(ピリジン-2(1H)-オン)インドールの構造ベース最適化により、従来シリーズより膜透過性が高く、イオンチャネル活性と分布容積が小さいTLR7/8デュアル拮抗薬が得られた。
- 初期のピリドンリードは予想外に免疫細胞の増殖を抑え、チームはBRD4へのオフターゲット結合が原因と推定した。
- BRD4結合を取り除く最適化により、増殖抑制は消え、ヒト全血でのTLR7/8依存的IL-6産生の強力な阻害は維持された。
💡 ポイント細胞パネルでの不可解な毒性から機構の仮説を立て、SARで二つの活性を切り分けるという、表現型起点のオフターゲット対策のきれいな例だ。エンドソームのTLR7/8拮抗薬には膜透過性と高い選択性の両立が必要で、平面性の高いヘテロ芳香族はBRD4という落とし穴にはまりやすい。他の骨格に応用する前に、TLR7/8二量体界面でのピリドンの結合様式を確認したい。
Structure-Based Design of 2-(Pyridone)Indoles as Antagonists of the Toll-Like Receptors TLR7 and TLR8 for the Treatment of Autoimmune Disorders ↗