トピック

薬物動態(DMPK・ADME)

24件

キノーム全体で高選択的かつ経口投与可能なマクロ環CDK7阻害剤

  • 17員環マクロ環のピラゾロトリアジン骨格を構造に基づいて最適化し、強力なCDK7阻害剤を得た。
  • 400種超のキナーゼパネルで有意なオフターゲット活性はなく、既存CDK7阻害剤の選択性の低さを克服している。
  • 細胞では細胞周期停止と転写抑制、c-Myc低下を示し、特にトリプルネガティブ乳がん細胞で顕著だった。経口バイオアベイラビリティも良好で、薬物動態は線形だった。
💡 ポイント

CDK7で400種超のキナーゼにわたりクリーンな結果が出るのは珍しい。この分野の共有結合阻害剤はTHZ型の弾頭に頼ってきたからだ。非共有結合のマクロ環で経口曝露も取れているなら、転写依存性の適応症で実際に手に取りたいプロファイルである。残る問いはオンターゲット毒性で、キナーゼ間の選択性だけではCDK7の正常な転写での役割に起因する毒性は避けられない。

Discovery of Pyrazolo[1,5-a]-1,3,5-Triazine Derivatives as Potent, Highly Selective and Orally Available Macrocyclic CDK7 Inhibitors ↗

YKS-34:特発性肺線維症を狙う、PDE4Bに1000倍超選択的な阻害剤

  • 承認済みの唯一のPDE4B優先阻害剤nerandomilastはPDE4Dに対し約9倍の選択性にとどまり、これを改善することが出発点だった。
  • YKS-34は強力なPDE4B阻害剤で、PDE4A、4C、4Dにはいずれに対しても1000倍超の選択性を示す。
  • in vitroでTGF-β誘導の線維芽細胞活性化とLPS誘導のTNF-α放出を抑え、良好な薬物動態と肺組織への集積を示した。
💡 ポイント

悪心・嘔吐の原因はPDE4D阻害なので、9倍から1000倍超へという改善は狙う価値のある最適化だ。BとDのポケット差はごくわずかなので、結合様式がどうなっているのか気になる。盛り上がるのは、ブレオマイシンモデルで治療的投与の結果を見てからにしたい。

Discovery of YKS-34, a Highly Selective PDE4B Inhibitor for the Treatment of Idiopathic Pulmonary Fibrosis ↗

フラグメント相乗効果を使う遺伝的アルゴリズムでP-gp基質を非基質へ設計し直す

  • P-gpによる排出はバイオアベイラビリティやCNS曝露を制限するが、機械学習の基質分類器は具体的な設計指針に結びつきにくい。
  • SF-GAは遺伝的アルゴリズムの変異段階にフラグメント相乗効果の解析を組み込み、非基質に共起する部分構造へ置換を誘導する。
  • 評価回数を固定した比較で、GAや強化学習のベースラインと同等の最適化性能を示しつつ、合成しやすさは最も高く、採用された変異ごとに除去・挿入されたフラグメントを報告する。
💡 ポイント

実用上いちばん使えるのは、変異ごとのフラグメント報告だ。マッチドペア提案のように読めて、化学者がモデルに求める語り口になっている。最適化性能が「優れている」ではなく「同等」なので、価値は効率ではなく解釈性と合成可能性にある。実際の排出アッセイでの前向き検証が次の課題だろう。

Synergy-Guided Molecular Redesign of Predicted P-Glycoprotein Substrates toward Synthetically Feasible Non-Substrates ↗

PROTACの標的結合のばらつきは、E3認識よりも細胞内曝露の差が大きい

  • E3リガンド、リンカー、標的リガンドが異なる20種のPROTACを、セレブロンおよびVHLトレーサーに対する細胞内NanoBRET競合アッセイで評価した。
  • 添加濃度基準では見かけの活性が大きくばらつき、受動的なCaco-2透過性ではほとんど説明できなかった。
  • 実測した細胞内非結合型曝露で補正するとばらつきは大幅に縮小し、膜透過処理した細胞での値と一致した。
💡 ポイント

PROTACのSAR表をE3親和性の差として読む前に、細胞が実際に見た濃度を確かめたくなる。ばらつきの大半が非結合型曝露なら、活性向上に見えたリンカー修飾は透過性の改善にすぎないかもしれない。曝露を早期に測れば、見当違いの変数を追わずに済む。

Exploring the Relationship between Cell Permeability, Intracellular Exposure, and Target Engagement for PROTACs ↗

結晶構造で見る、脳移行性EGFR阻害薬が脳曝露だけでなく活性も高める理由

  • 血液脳関門透過性を高める設計がなされたEGFR阻害薬について、X線結晶構造解析と活性測定を行った。
  • BBB透過性を高める置換基はEGFRキナーゼドメインの多様な領域と相互作用し、生化学的・細胞活性は概ね向上した。
  • 塩橋を形成する部分構造と特定のハロゲン置換の組み合わせが最も有効で、「一石二鳥」の設計指針を示す。
💡 ポイント

CNS曝露と活性はたいていトレードオフなので、同じ極性・塩基性ハンドルで両方を得られるという結晶学的根拠は有用だ。塩橋とハロゲンの組み合わせは、自分のキナーゼ系列にも試せる具体的な設計則になる。ただし排出や非結合型脳内濃度には触れておらず、実際の有効性はそこで決まる。

Structural Insights into Brain-Penetrant EGFR Tyrosine Kinase Inhibitors with Enhanced Potency ↗

経口STING阻害薬D4、重症急性膵炎モデルで膵障害を軽減

  • SAR展開でD4を見いだした。STINGに直接結合し、オリゴマー化とTBK1/IRF3シグナルを阻害する。
  • マクロファージでは貪食能、オートファジー流束、ミトコンドリア機能を回復させ、NLRP3関連のパイロトーシスを抑えた。
  • D4は経口曝露が得られ高用量でも忍容性が良好で、セルレイン/LPSモデルで膵障害と酵素値を低下。STINGノックダウンでも同様の保護が見られた。
💡 ポイント

STINGはがん向けのアゴニストを追う例が多く、急性炎症に経口阻害薬という選択は毛色が違う。ノックダウンで表現型が再現されるのは機序面で安心材料だが、STINGのリガンドポケットは種差が大きいことで悪名高い。種間での挙動と、患者で急性期の投与窓が現実的かは確かめたい。

Discovery of Novel STING Inhibitors for the Treatment of Severe Acute Pancreatitis ↗

ビスホスホン酸をマスクして酸性スフィンゴミエリナーゼ阻害薬の細胞内活性を向上

  • 酸性スフィンゴミエリナーゼのアミノビスホスホン酸阻害薬ARC39をマスクし、細胞への取り込みを改善した。
  • マスク化誘導体は細胞でナノモル域の活性を示し、親化合物より約2桁強力だった。
  • 細胞内取り込みや安定性などの性質も詳しく調べられている。
💡 ポイント

ホスホン酸のマスク化は見慣れた手法だが、ASMには強力で細胞活性のあるツールが乏しく、細胞での約100倍の向上はターゲットバリデーションの面で意味が大きい。ASMが働くリソソームでマスクがきれいに外れるかが、プローブで終わるかリードになるかの分かれ目だ。

Masked Bisphosphonate Inhibitors of Acid Sphingomyelinase: Improved Cell Penetration and Potency ↗

物性駆動設計で吸入sGC刺激薬frespaciguatを創出、COPD合併肺高血圧向け

  • 経口sGC刺激薬は全身性低血圧や換気血流不均衡の悪化を招き得るため、肺に局在させる設計が求められた。
  • SARとPKの検討から、高い全身クリアランスと低い膜透過性が肺選択性の鍵と判明した。
  • 化合物15(frespaciguat、MK-5475)は極めて強力で標的結合滞留時間が長く、吸入後の非結合型肺/血漿曝露比は200倍超。ラット慢性低酸素モデルで有効性を示した。
💡 ポイント

高クリアランス・低透過性をあえて狙う設計は経口薬の発想と逆で、吸入剤プログラムに有用な指針となる。滞留時間と肺内保持の組み合わせが、ヒトで治療域として再現するかを確認したい。

Frespaciguat (MK-5475): A Novel Inhaled Soluble Guanylate Cyclase Stimulator for Pulmonary Hypertension Associated with COPD ↗

経口GSPT1分解グルーLG-NE-29、イソインドリノン骨格でグリオブラストーマモデルに有効

  • 生存率を指標にした表現型スクリーニングで、テモゾロミドへの耐性が速やかに生じるグリオブラストーマ細胞において、GSPT1が弱点であることが見いだされました。
  • イソインドリノン骨格を代謝安定性の観点から最適化し、CRBN依存的なGSPT1のユビキチン化とプロテアソーム分解を誘導する分子糊LG-NE-29が得られました。
  • 初期世代の骨格が抱えていた代謝上の弱点を克服し、経口バイオアベイラビリティを備え、グリオブラストーマの異種移植モデルで有効性を示したと報告されています。
💡 ポイント

イソインドリノン系CRBNグルーは代謝で脱落しがちなので、その弱点を潰した点にまず注目です。ただ鵜呑みにはできず、GSPT1のDC50とDmax、プロテオーム全体での選択性(IKZF1/3など他のネオ基質)、脳移行を含む経口PKを確認したいところです。GSPT1分解は細胞傷害性が強いため、正常細胞に対する治療域も気になります。

Discovery of LG-NE-29: An Orally Bioavailable GSPT1 Molecular Glue Degrader Effective in Glioblastoma Xenograft Models ↗

アリールアルキルエーテル系CD73阻害薬LB10、肺がんモデルで経口活性

  • CD73はアデノシン経路の律速酵素で、腫瘍免疫抑制に関わる標的です。
  • アリールアルキルエーテル骨格を設計し、LB10が生化学・細胞アッセイの両方で高い活性を示す最有望化合物となりました。
  • 酵素動力学と共結晶解析により、競合阻害であることが確認されました。
  • 細胞毒性は目立たず薬物動態も良好で、同系Lewis肺がんモデルへの経口投与により、単剤でも併用でも腫瘍増殖を抑えました。
💡 ポイント

経口で使える非ヌクレオチド型のCD73阻害薬という点が肝です。初期の強力な化学型の多くはAMP類似で、膜透過性やクリアランスの問題を抱えていました。競合型を裏づける共結晶構造があるので、エーテルリンカー周りのSARを進める足場としては使いやすそうです。ただ、可溶型と膜結合型酵素への挙動やヒトで意味のあるアデノシン読み出しを見るまでは、期待を抑えておきたいところです。

Discovery of LB10, a Potent and Orally Bioavailable Inhibitor of Ecto-5′-Nucleotidase as a Single Agent or in Combination for the Treatment of Lung Cancer ↗

ソフトドラッグ:外用薬に迅速で予測可能な不活化を組み込む設計

  • 作用後に代謝で速やかかつ予測可能に不活化されるよう設計する、ソフトドラッグの総説です。
  • 多くは実績あるリード化合物の近縁体で、加水分解を受けやすい基(しばしばエステル)を意図的な弱点として組み込みます。
  • 皮膚局所での活性を保ちつつ全身曝露を抑えたい、開発中の外用ソフトドラッグを取り上げています。
  • 実用上の留意点、残る課題、今後の方向性にも触れています。
💡 ポイント

外用リードを最適化している立場から言えば、代謝の弱点は後から潰す欠点ではなく、設計の入力変数だということです。皮膚では保たれ血漿中では速やかに消えるようエステルの不安定性を調整するのは、SARで追いやすい課題で、全身安全性に関わる作業もかなり減らせます。リスクはお決まりで、種差や皮膚と血液のエステラーゼ差により、前臨床のクリアランスが当てにならないことがあります。

Soft drugs: design principles and topical applications ↗

加齢で亢進するトランスサイトーシスを利用、ROS応答型DAPK1分解薬を脳へ送るBmTAC

  • 神経変性疾患での分解薬は脳への送達が最大の壁であり、BmTACは加齢で亢進する脳血管内皮のカベオラ介在トランスサイトーシスを利用する大環状ペプチド・シャトルを搭載する。
  • VHLリガンドに付けた活性酸素種応答性のケージにより、ROSの高い組織に到達するまでPROTACは不活性に保たれる。
  • 活性型DAPK1を老化した脳で選択的に除去することを狙ったプラットフォームである。
💡 ポイント

侵入用のシャトルと活性化用のROSケージという二重のゲートは巧みな設計だが、課題は医薬化学からコンジュゲートのCMCやPKへ移る。末梢でケージが外れたPROTACの割合と、シャトルが老化した内皮の性質に依存する点(患者の適用範囲を狭めうる)は厳しく見たい。in vivoデータが堅ければ、CNS向け分解薬として確かな一歩だ。

Blood-Brain Barrier-Permeable Macrocyclic Chimeras (BmTACs) for Targeted Protein Degradation in the Aging Brain ↗

共有結合型シクリトールアジリジン、脳移行性で選択的なGBA2阻害薬を実現

  • GBA2にはGBA1やグルコシルセラミド合成酵素と区別できる阻害薬がなかった。研究チームは、既報のβ-D-アラビノフラノース型活性ベースプローブを土台に、エポキシド、環状硫酸エステル、N-アルキルアジリジンなど求電子基をもつシクリトールの集中ライブラリーを構築した。
  • GBA1、GBA2、GBA3、グルコシルセラミド合成酵素に対する評価で、GBA2に選択的な共有結合型阻害薬が見つかった。
  • リード化合物は、GBA2をin vivoで選択的に不活性化する初の脳移行性共有結合型阻害薬と報告されている。
💡 ポイント

活性ベースプローブの骨格をin vivoツール化合物へ転換した道筋が見事で、GBA1やGCSに対する選択性こそGBA2研究に欠けていたものだ。スフィンゴ脂質やライソゾーム病に取り組む人には実用的なツールになる。気になるのは、in vivo曝露下での共有結合性オフターゲットで、アジリジンは穏やかな求電子剤ではない。

β-d-Arabinofuranose-configured Cyclitol Aziridines as Selective, Brain-penetrant Covalent GBA2 Inhibitors ↗

細胞膜透過性ポリ(ジスルフィド)の取り込み機構の化学的基盤を解明

  • ポリ(ジスルフィド)は環状ジスルフィドモノマーの開環交換で作られる動的共有結合ポリマーで、グアニジニウム基を持つ鎖はチオール依存性取り込みにより、古典的なエンドサイトーシスを介さず細胞膜を通過する。
  • 本研究はこの取り込み過程の化学的基盤を検証し、ポリマー構造とジスルフィド交換が膜透過と細胞質内放出をどう左右するかを明らかにする。
  • 本成果はポリ(ジスルフィド)がタンパク質・抗体・核酸を細胞質へ送達する高分子デリバリーモダリティであることを裏付け、リソソーム分解を回避できる点を示す。
💡 ポイント

エンドサイトーシスを丸ごと回避できる点が本当の目玉だ。LNPもほとんどのCPPも結局はエンドソームからの脱出が必要で、ペイロードの大半はそこで失われる。動的共有結合性のスキャフォールドなら、グアニジニウム密度とジスルフィド交換速度は調整可能なノブであり、作り直してスクリーニングし直すペプチド配列とは違う。抗体やsiRNAペイロードでエンドソーム脱出がボトルネックになっている案件なら、見直す価値がある。

The Nature of Cell‐Penetrating Poly(disulfide)s ↗

脳移行性の共有結合型BChE阻害剤、アルツハイマー病モデルで認知機能改善効果

  • 研究チームは構造誘導型設計を用い、アルツハイマー病の進行に関与するとされるヒトブチリルコリンエステラーゼ(BChE)を標的とする共有結合型低分子阻害剤を開発した。
  • リード化合物は血液脳関門透過性を高めるよう設計されており、中枢作用型コリンエステラーゼ阻害剤における主要な課題に対応している。
  • in vivo試験では認知機能改善効果が示され、共有結合型BChE阻害がアルツハイマー病の治療戦略として有望であることが支持された。
💡 ポイント

病期が進むとBChEが上昇し、AChEが低下するという知見が、ついにAChE一辺倒の定説から研究を前進させている。ただ、AChEなど近縁パラログの多いセリン加水分解酵素ファミリーに共有結合ウォーヘッドを当てるなら、効力データだけでなく厳密な選択性データが必要だ。リバスチグミン系の可逆的阻害薬と実際に一線を画すのはCNS移行性——脳への到達は従来ずっと解決できていなかった課題だ。

Structure-Guided Design of a Brain-Penetrant Covalent Inhibitor of Human Butyrylcholinesterase with In Vivo Procognitive Efficacy ↗

脂質ナノ粒子のフッ素化チューニングでPROTAC送達効率を向上

  • 研究チームはフッ素化した脂質テールを持つイオン化脂質を設計し、PROTAC分解誘導剤を封入するナノ粒子を作製した。
  • フッ素化の程度を調整することでナノ粒子の物理化学的特性が変化し、細胞内輸送経路がシフトして、エンドソームからの脱出効率が向上した。
  • 最適化されたフッ素化製剤は、非フッ素化脂質の対照と比べて、より高い細胞質内PROTAC放出と標的タンパク質分解を達成した。
💡 ポイント

LNPで送達されるPROTACペイロードの大半は、エンドソームを脱出できずに捕捉され、リソソームで分解されてしまう。脂質テールのフッ素含量を調整して細胞質への放出を高めるのは、siRNA-LNPの手法をそのまま転用した賢い工夫だ。この足場が今回試験した分解剤を超えて汎用化できるなら、経口投与には大きすぎる、あるいは極性が高すぎる二官能性PROTACの多くを救えるかもしれない。

Fluorination-Tuned Ionizable Lipids Regulate Nano-PROTAC Trafficking for Enhanced Targeted Protein Degradation ↗

経口STAT6分解PROTAC、アトピー性皮膚炎治療に新たな可能性

  • 新規PROTAC分解薬がSTAT6を標的とする。STAT6はIL-4/IL-13シグナルを伝達し、Th2型アレルギー性炎症を引き起こす転写因子である。
  • STAT6を阻害するのではなく、この分子はSTAT6結合フラグメントと分解誘導ハンドルを連結し、関連するSTATタンパク質に対する高い効力と選択性を狙う。
  • 前臨床試験で経口投与時の有効性が報告されており、アトピー性皮膚炎における注射用生物学的製剤に代わる経口薬となる可能性を示している。
💡 ポイント

経口バイオアベイラビリティこそ、標的選択より難しい成果だ——PROTACはリピンスキー/bRo5の制限(分子量、極性表面積)を超えがちで、腸管で安定して経口有効性を示す分解薬を作る方がよほど珍しい合成的達成だ。STAT1/3/5との選択性がin vivoで保たれるなら、注射剤のデュピルマブを飛び越え、すでに臨床入りしている他の経口STAT6分解薬プログラムに圧力をかける。

Discovery of a Potent, Selective, and Orally Efficacious STAT6 PROTAC for the Treatment of Atopic Dermatitis ↗

新たな計算スコア、PROTACの経口吸収予測を目指す

  • PROTAC(標的タンパク質分解誘導キメラ)は分子サイズが大きく、極性が高く、コンフォメーションの自由度も大きいため、古典的なRule-of-5の範囲を外れることが多く、標準的な物性フィルターだけでは経口吸収を予測しにくい。
  • 本論文は、創薬プロセスのより早い段階で合理的なin silico PROTAC設計を支援することを目的として、実測値に主に頼らない完全計算ベースの経口吸収スコアリング手法を提案している。
  • このスコアは、分子サイズ、極性・脂溶性のバランス、柔軟性、分子内フォールディングなどのコンフォメーション挙動といった計算記述子から構成されているとみられ、これらはbeyond-Rule-of-5化合物の膜透過性に関連することが知られている特徴である。
  • これらの記述子を単一の予測指標に統合することで、合成前にPROTAC候補化合物の経口吸収ポテンシャルを順位付け・選別できるようにすることを狙いとしている。
  • 著者らはこのスコアを、リンカー、ウォーヘッド、E3リガンドの修飾を経口バイオアベイラビリティ向上に向けて導くための実用的な設計段階ツールと位置付けており、実験的な透過性評価を代替するのではなく補完するものとしている。
💡 ポイント

リンカーがダメだと分かる前に2週間かけて合成しCaco-2に回す、なんて事態を避けられるツールなら大歓迎だ。PROTACのメドケムサイクルはきつい。ライブラリが50化合物を超えたあたりから「とりあえず作って透過性を測ろう」はもう通用しない。 とはいえ、Ro5超え領域の透過性モデルが分子内水素結合やカメレオン的な折りたたみを過大評価する例を何度も見てきたので、検証セットと自分たちのケモタイプへの当てはまりを確認するまでは慎重にいたい。コンフォメーション挙動こそ、計算が最も苦手とする部分だ。 このスコアが本当に役立つのは「真実」ではなく「選別」の場面だ。候補をランク付けし、明らかにダメなものを弾いてから、境界線上の化合物にウェットラボの予算を回す。MW・PSA・cLogPのカットオフを目視するよりは確実な進歩だ——PROTAC業界では誰もがそれが通用しないと知っている。もし記述子がサイズと相関するだけでなく折りたたみ傾向を本当に捉えているなら、リンカーSARに労力を割く場所を大きく変えるかもしれない。

Toward Rational Design of Orally Bioavailable PROTACs: Development of a Fully Computational Oral Absorption Score ↗

新規ベンゾイミダゾール-テトラヒドロフラン系、強力かつ選択的なNaV1.8阻害薬リードを創出

  • NaV1.8阻害は臨床で検証された非オピオイド鎮痛戦略であり、上市薬VX-548(Journavx)がベンチマークとなっている。同薬のヒトおよびラットでの代謝経路はよく特徴づけられている。
  • 研究チームは2-(2-ベンゾイミダゾール)置換テトラヒドロフランという新規化学構造を設計し、構造に基づく最適化によってVX-548の既知の代謝上の弱点を回避しつつ、ナノモルレベルのNaV1.8活性とサブタイプ選択性を維持した。
  • 得られたリード化合物31はラットで良好な経口バイオアベイラビリティを示し、血漿AUCはVX-548の10倍以上に達し、in vivoでの強い鎮痛効果も確認された。
  • 薬物動態プロファイルは種を超えて一貫しており、ビーグル犬およびカニクイザルでも良好な結果が得られた。
  • 化合物31は遺伝毒性なし、hERG阻害も弱いという良好な初期安全性プロファイルを示し、代謝面で最適化された前臨床リードとしてさらなる評価が期待される。
💡 ポイント

これは代謝最適化の勝負どころだ、と言った方が近い。VX-548のクリアランス上の弱点はヒトとラットですでに解明されており、2-ベンゾイミダゾール-テトラヒドロフラン骨格への転換は、やみくもなSAR探索ではなく既知の弱点を狙った定向型のスキャフォールドホッピングに見える。 これこそファストフォロワープログラムを効率的に進めるやり方だ——承認済み第一号薬のADMEデータを設計仕様書として使う。ここで重要なのはラットAUCが10倍以上向上したという数字——頻回投与でも暴露にギャップが生じる化合物と、余裕を持って薬効試験に進める化合物との差を意味する。 hERGがクリーンでこの段階で遺伝毒性シグナルがないことは、トックス予算を使う前に最大の脱落リスクを潰せているということだ。THF-ベンゾイミダゾールコアは奇抜な化学ではなくスケールアップも容易——論文上の化合物ではなく、本物のバックアップ・第二世代候補に見える。

Discovery of Novel 2-(2-Benzimidazole)-Substituted Tetrahydrofurans as Potent and Selective NaV1.8 Inhibitors for the Treatment of Pain ↗

VHLリクルート型PROTAC分解剤が変異型EGFRを分解、NSCLCモデルで効果を示す

  • 研究チームは、非小細胞肺癌(NSCLC)における従来のEGFRキナーゼ阻害剤への獲得耐性を克服するため、EGFRを標的としたVHLリクルート型PROTAC分解剤を設計した。
  • リード化合物C4およびD4は、EGFR Del19およびL858R耐性変異体に対して強力かつ選択的で持続的な分解を達成した。
  • C4は細胞周期停止とアポトーシスを誘導し、サブナノモル濃度の抗増殖活性を示し、HCC827異種移植モデルにおいて低用量の静脈内投与かつ週2回への減量投与スケジュールで顕著な腫瘍退縮をもたらした。
  • D4は経口バイオアベイラビリティを有し血液脳関門を透過し、経口投与によりin vivoで腫瘍増殖を完全に抑制した。
  • これらの知見は、従来の阻害ではなく分解に基づく戦略が、中枢神経系への関連性も視野に入れた次世代EGFR標的治療への道筋となりうることを支持する。
💡 ポイント

D4が経口バイオアベイラビリティと血液脳関門透過性という二つの壁を同時に越えてきたことこそ、今回の本題だ——VHLリクルート型のEGFR分解剤という化学自体は目新しくない。多くのVHLディグレーダーは分子量800~1000のPEGリンカー付きの「レンガ」で、in vitroでは華々しくても経口・CNS薬としては使い物にならない。この開発可能性の壁こそ、このクラスがずっと突き当たってきたものだ。 C4のプロファイルはむしろ従来型の静注PROTACに近い印象で、サブナノモルの抗増殖活性と低用量・週2回投与での腫瘍退縮は良好な治療域を示すが、この投与スケジュールの絞り込みは、触媒的ターンオーバーとクリアランスをまだ完全には制御しきれていないことの裏返しでもある。 Del19/L858Rを阻害ではなく分解する戦略は、オシメルチニブの効果を削ぐ二次変異による耐性を回避できる点が強みだ。in vivoで野生型EGFRに対する選択性も維持されるなら、これは単なるメカニズム実証ではなく、NSCLC向けの本物の次世代ケモタイプと言える。

Discovery of Potent and Selective VHL-Recruiting PROTAC Degraders Targeting EGFR with Improved Developability and Potent Anti-NSCLC Efficacy ↗

研究者ら、代謝性疾患治療に向けたキノリン系CYP8B1阻害剤のリード化合物を開発

  • CYP8B1は胆汁酸合成経路に関わる肝臓の酵素で、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)や2型糖尿病といった代謝性疾患の治療標的として注目されている。
  • 研究は、ハイスループットスクリーニングで見出されたCYP8B1阻害剤「化合物1」から始まったが、代謝安定性が低く動物実験に進めなかった。
  • 化学者らは構造に基づく薬剤設計と代謝物同定を組み合わせて分解の仕組みを解明し、DMPK(薬物代謝・薬物動態)データに基づくアナログ合成で構造活性相関を探索した。
  • こうした取り組みにより、代謝安定性が大幅に改善されたキノリン系誘導体「化合物9」が創出された。
  • マウス実験では化合物9がin vivoでCYP8B1を強力に阻害することが示され、さらなる最適化に向けた確かなリード化合物となった。
💡 ポイント

化合物1が生体内試験に使えないほど早く分解する→代謝物を同定する→その脆弱性を潰すように再設計する、というのはDMPK主導のリード最適化の教科書的な進め方だ。こういう工程を隠さずきちんと示してくれるのは好印象。最終的にキノリン骨格に落ち着いた点も評価できる——合成が扱いやすく、SAR空間もよく理解されているので、類縁体展開がしやすいはずだ。CYP8B1/胆汁酸経路も、NAFLDやT2D領域で使い古されたFXRやGLP-1とは違う土地なのがいい。ただ引っかかるのは、化合物1から安定でin vivo活性のある化合物9まで、一連のキャンペーンでここまでスムーズに到達した点。代謝上の弱点を実際に潰した置換基や環の変更が何だったのか、そこのSARテーブルを見るまでは全面的には信じきれない。

Structure-Based Drug Design of Quinoline CYP8B1 Inhibitors for the Potential Treatment of Metabolic Disease ↗

血液脳関門を通過するPROTACマクロサイクル、老化脳でDAPK1を選択的に分解

  • マクロサイクルペプチドシャトルとPROTAC型分解モジュールを融合させた新たな脳透過性分解分子「BmTAC」が登場した。
  • このペプチドシャトルは、加齢に伴い活性化する脳血管内皮細胞のトランスサイトーシス経路を利用し、血液脳関門を効率的に通過して神経細胞まで送達される。
  • 分解剤のVHLリガンド部分に化学的な「ケージ」を導入することで、アルツハイマー病病変部に特有の高酸化ストレス環境に触れるまで不活性状態を維持し、脳内の他部位での作用を抑える。
  • 活性化後、この化合物はDAPK1の活性化・疾患関連型を選択的に分解する。
  • 老化したアルツハイマー病モデルマウスへの全身投与により、活性化DAPK1が減少し、アミロイドβ沈着とタウ過剰リン酸化が軽減され、認知機能が改善した。これは加齢に適応した脳標的タンパク質分解の新戦略を示すものである。
💡 ポイント

最大の工夫はケージ化されたVHLリガンドだ――酸化ストレス依存的な脱ケージ機構によって、病変組織に到達するまでウォーヘッドはプロドラッグのまま眠る。これが機能すれば、全身投与型PROTACを悩ませてきた末梢毒性問題への突破口になり得る。ただし対照データが見たい。慢性投与で病変外CNS組織でもどの程度脱ケージが漏れるのか、そして『活性化DAPK1』選択性はマウスのコンフォーマー特異的な現象なのか、ヒトプロテオフォームでも成立するのか。マクロサイクルペプチドと低分子の複合体は合成的に過酷だ――SPPS、環化、PROTACとのコンジュゲーション、各工程で収率が削られる。これはスケーラブルな創薬シリーズではなく、あくまで概念実証。固定的なRMT受容体(トランスフェリン、インスリン)ではなく加齢依存的に亢進するトランスサイトーシス経路を狙った点こそ、TfRシャトル型分解剤に対する本当の新規性であり、問題はこの経路が老化モデルだけでなく病期全体で創薬可能かどうかだ。

Blood-Brain Barrier-Permeable Macrocyclic Chimeras (BmTACs) for Targeted Protein Degradation in the Aging Brain ↗

脳移行性CD38阻害薬、マウスでNAD+濃度を用量依存的に上昇

  • CD38は細胞内のNAD+代謝とカルシウムシグナル伝達を担う中心的な酵素であり、神経・精神疾患の標的としての関心が高まっている。
  • 研究チームは、補因子ADPRとの付加体形成を介してCD38を非拮抗的(アンコンペティティブ)に阻害する、新規の三環性化合物シリーズを設計した。
  • 6員複素芳香環コアをイミダゾール系ウォーヘッドに共有結合でつなぎ、活性配座を固定することで、マウスおよびヒトCD38に対する生化学的活性が向上した。
  • コアおよびリンカー部分の物性を指標とした反復最適化により、マウスにおける非結合型薬物の脳/血漿中濃度比が改善された。
  • 得られたリード化合物16は、経口投与後にマウスの脳および肺組織でNAD+濃度を用量依存的に上昇させることがin vivoで示された。
💡 ポイント

ADPR付加物を捕捉する非競合的阻害という発想は上手い。混み合った活性部位で殴り合うのではなく、産物複合体を狙うことで、細胞内の高い基質(NAD+)濃度と競合せずクリーンな速度論が得られるはずだ。ただしSARが基質のターンオーバーに依存するため、単純な生化学アッセイの解釈は難しくなる。ヘテロ芳香環とイミダゾールワーヘッドの二面角を共有結合で固定する手法は堅実な剛直化戦略だが、汎用性を語るにはまず合成ルートを見たい――トリサイクリック骨格にワーヘッドを架橋すると、通常は工程が増え収率が落ちる。本題はKp,uuを地道に詰めた部分で、コアとリンカーの物性を反復調整して脳内移行性を上げつつ効力を落とさない、王道のCNS薬化学であり、地味だが規律ある実行力の勝負だ。CD38は免疫細胞を含め広く発現しているため、この先に進むなら末梢での標的関与や免疫系への影響データを見たい――daratumumabの抗体アプローチは細胞外に留まることでこの問題を丸ごと回避している。

Design and Exploration of a Tricyclic Series of CNS-Penetrant CD38 Small Molecule Inhibitors ↗

TRI-611:血液脳関門を通過する分子グルー分解剤がALK陽性肺がんに挑む

  • TRI-611は、非小細胞肺がんの一部を引き起こすALK融合タンパク質を除去するために設計された、経口投与可能な分子グルー分解剤である。
  • 従来の阻害剤のようにALKの活性部位を塞ぐのではなく、E3リガーゼアダプターであるセレブロンをALK上の別の部位に呼び込み、複合体を形成してタンパク質分解の標的とする。
  • 本剤は高い選択性を持つと報告されており、他のセレブロン依存性標的や無関係なキナーゼには影響を与えず、野生型および既存のキナーゼ阻害剤に耐性を持つALK融合変異体の両方を分解する。
  • 重要な特徴は脳への移行性であり、TRI-611は皮下腫瘍だけでなく頭蓋内腫瘍モデルでも退縮をもたらし、既存のALK標的治療薬の限界であった中枢神経系への転移に対処する。
  • 分解作用は速やかかつ持続的であり、既存のALK阻害剤と併用することで前臨床モデルにおいてより持続的な奏効が得られた。
💡 ポイント

TRI-611が通常のIMiD由来デグロンを介さず、ALK上の非正典的な別表面にセレブロンを呼び込んでいる点こそ本当の化学的見どころだ——この三者複合体の界面が本物なら、グルー化しにくいキナーゼへの新しいテンプレートになりうる。 キナーゼ阻害剤耐性のALK融合変異体まで一掃できる点が最大の売りだ。分解機構は、ゲートキーパー変異やコンパウンド変異がATP競合阻害剤の親和性を削る効果を気にしない。TKIにはもう効かない変異体でも、機能的な三者複合体は形成できるということだ。 CRBNグルーで脳内曝露を実現している点は化学的にはより難しい達成で、この手のスキャフォールドは通常Ro5を大きく外れるため、三者複合体の協同性を犠牲にせず脳透過性を得たのは偶然ではなく最適化の成果だろう。 他のCRBNネオ基質に対する選択性と既存ALK阻害剤との併用データを見ると、TKIの後釜としてではなく併用パートナーとして位置づけられる可能性がある。

TRI-611, a selective, brain-penetrant molecular glue degrader of ALK ↗