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2026-10-02 のダイジェスト

2026-10-02

本日はサイエンス8件、ビジネス2件。Nav1.7鎮痛薬リードやHDAC8・脳移行型の分解薬、p300/CBPの総説、Boltz-2による仮想スクリーニングなどに加え、業界ではSanofiとRegeneronの10億ドル規模の抗体提携拡大と、Lillyのアミリン併用療法の第2相結果を扱う。

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メドケム

7件

ネイティブMSで見えた、PROTACのリンカー長とウォーヘッドが三者複合体に及ぼす別々の影響

  • イオンモビリティー、表面誘起解離、可変温度ESIを組み合わせ、2種のBETリガンド(JQ1とI-BET726)と異なる長さのPEGリンカーで作ったBRD4–PROTAC–VCB複合体を調べた。
  • 短いリンカーでは複合体がより伸びた形に保たれ、長く柔軟なリンカーでは天然に近い緩んだ構造を取れる。
  • JQ1の複合体は衝突でPROTACが脱離しやすく、結合の強いI-BET726の複合体は保持しやすい。融解挙動も異なった。
💡 ポイント

リンカー最適化は依然として経験頼みなので、構造が複合体界面にどう効くかを別角度で測れるのはありがたい。気相データは溶液中の協同性そのものではなく、これだけで分解薬を順位付けはしないが、細胞での分解活性と並べれば2つのウォーヘッドの挙動の違いを説明する助けになりそうだ。プレプリントなので、査読までは暫定的な結論と見ておく。

Native Mass Spectrometry Reveals Distinct Effects of Linker Length and Targeting-Ligand Identity on PROTAC Ternary Complexes ↗

MicroEDで絶対配置を確定したキナゾリン系Nav1.7阻害薬、げっ歯類で経口鎮痛効果

  • ライブラリー由来の弱いキナゾリンヒットから約20誘導体のSARを進め、Nav1.5に対する選択性を備えたサブマイクロモル活性のキラルリードを得た。
  • 絶対配置はMicroEDで決定され、大きな結晶なしに活性エナンチオマーが明確になった。
  • 経口曝露は許容範囲で、2種のげっ歯類疼痛モデルで効果を示し、44標的のオフターゲット試験もクリーン。Nav1.7ノックアウト神経細胞対照も標的特異性を支持する。
💡 ポイント

Nav1.7は選択性とトランスレーションで多くのプログラムが躓いてきた標的なので、まず見るのはオフターゲットの清潔さとノックアウト細胞での対照だ。ただ活性はまだ控えめで必要用量も高く、候補ではなく出発点の骨格と見るべきだろう。実務的な収穫はMicroEDで、初期リードのキラリティーをナノ結晶から決められればエナンチオマー探しの数週間を節約できる。

Discovery of a Quinazoline-Based Nav1.7 Inhibitor with MicroED-Confirmed Absolute Configuration and Oral Efficacy in Rodent Models of Neuropathic Pain ↗

p300/CBP創薬:二機能性分解薬は従来型阻害薬を超えるのか

  • p300/CBPのブロモドメインと触媒(HAT)ドメインを標的とする低分子阻害薬を総覧し、臨床段階の化合物がどう最適化されたかに重点を置いたパースペクティブ。
  • 続いて、PROTACを含む二機能性の近接誘導分子へと研究が移っている流れをたどる。
  • この大型・多ドメインの転写コアクチベーターに対し、各モダリティが何をもたらすかを比較している。
💡 ポイント

p300/CBPは、分解薬が分子量に見合う価値を持つ場面かどうかを試す好例だ。阻害薬では残ってしまう足場機能こそ、分解薬が取り除ける部分である。HATドメインとブロモドメインの最適化の経緯は、扱いにくいクロマチン標的を抱える人に参考になる。ただp300とCBPはほぼ同一なので、分解薬の項はパラログ選択性の点を割り引いて読みたい。

Targeting Transcriptional Coactivators p300/CBP: Small-Molecule Inhibitors or Bifunctional Proximity-Inducing Modalities? ↗

Direct-to-Biologyで見出した、他のHSP70に影響しないGRP78選択的阻害薬

  • 高度に保存されたHSP70ファミリー内でのアイソフォーム選択性は難題であり、本研究はGRP78の基質結合ドメインのペプチド結合ポケットを標的にした。
  • 精製せず粗反応液をそのまま評価するDirect-to-Biologyの手法で化合物12が見つかった。
  • 生化学・物理化学・細胞熱シフト測定でGRP78との結合が確認され、他のHSP70に対して選択的で、小胞体ストレス応答を修飾しA549細胞を選択的に殺傷する。
💡 ポイント

ATP部位ではなく基質ポケットを狙うのはHSP70で選択性を稼ぐ堅実な方法で、D2Bなら改良の反復も安く済む。細胞株選択的な殺傷はUPR依存性なのかオフターゲットなのか分からないので慎重に見たい。CETSAなど直交的な結合データは心強く、次は構造が近い不活性アナログが欲しい。

Development of Isoform-Selective GRP78 Inhibitors from a Direct-to-Biology Strategy ↗

「2-in-1」設計でセレブロンリガンドをHDAC8キャップ部に統合、分解薬を小型化

  • 二つのリガンドをリンカーで繋ぐ代わりに、セレブロン結合モチーフをHDAC8阻害薬のキャップ基に組み込み、一つの構造要素で両タンパク質に結合させた。
  • 同グループの第一世代分解薬と比べ、分子量が小さく選択性と薬物様性が向上した。
  • in vivoでもHDAC8を強く分解する。
💡 ポイント

PROTACの嵩高さは必要経費として受け入れられがちだが、E3リガンドをウォーヘッドのキャップ部に溶け込ませる発想はそこを正面から突いており、他の亜鉛酵素にも転用できる。気になるのは、共有モチーフがどちらの結合も損なわないか、セレブロンの新規基質選択性に影響しないかだ。in vivoの分解と物性が両立するなら、リンカーレス路線はもっと注目されていい。

A 2-in-1 Strategy for the Discovery of Compact HDAC8 Protac Degraders ↗

加齢で亢進するトランスサイトーシスを利用、ROS応答型DAPK1分解薬を脳へ送るBmTAC

  • 神経変性疾患での分解薬は脳への送達が最大の壁であり、BmTACは加齢で亢進する脳血管内皮のカベオラ介在トランスサイトーシスを利用する大環状ペプチド・シャトルを搭載する。
  • VHLリガンドに付けた活性酸素種応答性のケージにより、ROSの高い組織に到達するまでPROTACは不活性に保たれる。
  • 活性型DAPK1を老化した脳で選択的に除去することを狙ったプラットフォームである。
💡 ポイント

侵入用のシャトルと活性化用のROSケージという二重のゲートは巧みな設計だが、課題は医薬化学からコンジュゲートのCMCやPKへ移る。末梢でケージが外れたPROTACの割合と、シャトルが老化した内皮の性質に依存する点(患者の適用範囲を狭めうる)は厳しく見たい。in vivoデータが堅ければ、CNS向け分解薬として確かな一歩だ。

Blood-Brain Barrier-Permeable Macrocyclic Chimeras (BmTACs) for Targeted Protein Degradation in the Aging Brain ↗

DT-9081:スキャフォールドホッピングで生まれ、第1相を終えた経口EP4拮抗薬

  • EP4阻害は、腫瘍内でPGE2が引き起こす免疫抑制を解除する免疫腫瘍学のアイデアである。
  • スキャフォールドホッピングで活性と薬物動態が改善した新規シリーズを得て、SARを進めてDT-9081に至った。
  • 強い拮抗活性、良好なADME、前臨床での良好な安全性を併せ持ち、固形がんでの第1相単剤試験を完了している。
💡 ポイント

すでにヒトのデータがある化合物の医薬化学の全体像が読めるのは、多くの「Discovery of」論文より珍しく有用だ。EP4は競合が多いため、新シリーズが既存の拮抗薬に対しPKと安全性でどう差別化しているかが焦点になる。スキャフォールドホッピングの論理を読みつつ、第1相の結果がチェックポイント阻害薬との併用効果につながるかを見たい。

Discovery of DT-9081, a Potent and Orally Bioavailable Small Molecule Antagonist of the EP4 Receptor for the Treatment of Solid Cancers ↗

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計算・AI創薬

1件

Boltz-2共折り畳みで867化合物を40に絞り込み、大半が活性を示した仮想スクリーニング

  • 共折り畳みモデルがドッキングに代わるトリアージ手段になるかを、がん関連酵素AKR1B10でBoltz-2を用いて検証した。
  • 化学的に多様な867化合物から、予測親和性と多様性フィルターで40化合物を選んだ。
  • 試験した化合物の約7割が低マイクロモル以下の阻害活性を示し、新規骨格を持つサブマイクロモル阻害薬も複数得られた。
💡 ポイント

40化合物で7割が活性というのは仮想スクリーニングとして目を引く数字だが、元のライブラリーが小さく、標的も疎水性で許容度の高いポケットを持つ酵素である点は割り引きたい。より難しい標的での再現と、同一化合物に対するドッキングのベースライン比較が見たい。それでも、評価数が現実的で新規ケモタイプも得られており、ヒット探索の手順として真似しやすい。

Efficient Discovery of Potent AKR1B10 Inhibitors Using Co-folding Model Boltz-2 ↗

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業界ニュース

2件

Sanofi、Regeneronに10億ドルを前払い、Dupixent提携に長時間作用型の免疫抗体4種を追加

  • SanofiとRegeneronは提携を拡大し、前払い10億ドルに加え、開発・承認・販売マイルストーンで最大70億ドルを設定した。
  • 追加されるのは、臨床段階の長時間作用型IL-13抗体REGN20423、長時間作用型IL-4xIL-13二重特異性抗体、IL-4経路を標的とする前臨床の長時間作用型抗体2種の計4種。
  • 研究開発はRegeneronが主導し、世界での商業化はSanofiが担う。費用と利益は50対50で分け合う。
💡 ポイント

2031年の米国Dupixent特許切れを前に、Sanofiはあの事業を成功させた唯一のパートナーから後継薬を買う形だ。第1相の抗体1本と前臨床3本に10億ドルを払うのは、混み合う2型炎症領域で長時間作用という差別化に賭ける判断と読める。Regeneronにとっては非希薄化の資金と提携関係の再確認になる。Sanofiの他の免疫関連資産が後回しにならないかを見たい。

Sanofi pays Dupixent partner Regeneron $1B upfront for 4 early-stage assets to ignite R&D ↗

Lillyのアミリン+Zepbound併用、第2b相で過去最高の体重減少、ただし脱落は増加

  • EloraTZPはアミリンアゴニストeloralintideとチルゼパチドの併用で、肥満を伴う2型糖尿病の成人で48週時点の体重減少とA1Cがチルゼパチド単独を上回り、最高用量で最大23.3%の体重減少を示した。
  • 有害事象による投与中止は併用群で多く、主に用量漸増期の消化器症状で、忍容性に疑問が残る。
  • Lillyは2026年第4四半期に第3相を開始する予定だ。
💡 ポイント

アミリン追加でretatrutideの糖尿病集団の数字を上回ったことは、肥満治療の次の一手は併用だというLillyの主張を補強し、AbbVieやPfizerのアミリン勢に先んじる形になる。商業的に本当に効くのは脱落率で、漸増で消化器症状を抑えられなければ、見出しの有効性の優位は実際には縮む。第3相の設計、特に用量漸増の方法が、どこまで実現可能かを教えてくれるだろう。

STAT+: Eli Lilly's Zepbound combined with amylin drug led to significant weight loss in mid-stage trial ↗